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今回は、「第三者への承継(その4)」についてお話ししたいと思います。
事業譲渡による方法の場合、株式の譲渡による方法と比べて……
前回の第三者への承継で株式の譲渡を選択する際には……(中小企業経営者のための事業承継!その17)では、「株式の譲渡」による第三者への承継を説明しましたが、今回は「事業譲渡」による第三者への承継を説明したいと思います。

事業譲渡による方法は、株式の譲渡による方法と同様に、第三者への承継で用いることができるという点で共通していますが、株式の譲渡による方法と違って、承継の対象が株式会社に限定されないという点で大きな違いがあります。
つまり、株式の譲渡による方法が、会社の所有権を表す株式を譲渡の対象とするのに対し、事業譲渡による方法は、営んでいる事業そのものを譲渡の対象とするため、個人事業者*が営んでいる事業であっても、これを承継の対象とすることが可能になるのです。
*個人事業主という用語の方が一般的に使用されていますが、消費税法第2条第1項第3号で事業を行う個人を個人事業者と定義していますので、私のブログ記事では個人事業者という用語で統一しています。
更に、事業譲渡は後継者との契約によって、承継の対象となる事業を制限することができるので、株式の譲渡による方法とは違い、一部の事業だけを後継者に譲渡することが可能になります。
但し、その場合には、承継されない事業が残ってしまうことにもなるため、そのような残った事業については、現在の経営者がそのまま経営を続けることが必要です。(もしも、現在の経営者がリタイアしたいのであれば、残った事業を承継したいという別の後継者を探すか、関係者の了解を得て残った事業を廃業する必要があるでしょう……)

事業譲渡による方法のメリットやデメリット!
このように、事業譲渡による方法は、株式の譲渡による方法と比べて、譲渡する対象の内容を細かく定められるという大きな特徴があるのですが、これは同時に手続きが煩雑になることも意味しているため、これらのメリットやデメリットを十分に勘案して、事業譲渡による方法を選択するかどうかを決めることが必要になります。
例えば、事業譲渡による方法の場合、株式の譲渡による方法と違って、譲渡する事業で働いている従業員が自動的に承継されるということにはならないので、従業員一人ひとりから個別に同意を得なければならないのです。
そのため、後継者がキーマンになると思っていた従業員が同意してくれない場合も十分に考えられます。(もちろん、株式の譲渡による方法であっても、キーマンになると思っていた従業員が後継者を嫌って、事業承継をした後で直ぐに退職してしまうという危険はあるのですが……)
他にも、債権や債務を承継する際には、承継する債権や債務の契約を後継者との間で締結する必要があるので、株式の譲渡による方法に比べて手続きが煩雑になりますが、一方で、そのような手続きが必要であることから、後継者の側から見れば、自分には知らされていない簿外債務(=貸借対照表に記載されていない債務のこと)を引き受けてしまうといったような問題は生じません。

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