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今回は、「人手不足の問題から見える事業再生の必要性」について考えてみたいと思います。
本当に人手不足が原因で倒産したのか?
近頃、人手不足が原因で倒産したというニュースを目にすることが多くなりました。
確かに、少子高齢化が進んだことで生産年齢人口(=15歳〜64歳の人口のこと)が減少していることは疑いようのない事実ですが、そうであっても人手不足を倒産理由としていることに私自身は違和感を覚えます。

というのも、働き手が減ったことが倒産に至った本当の原因であるというのなら、そうなることは前々から分かっていたことなのですから、ちゃんとした経営者であれば、何かしら事前に対策をしておく時間は十分にあったはずだからです。
つまり、人手不足が原因で倒産したという企業は、そうなる前に事業を見直す必要があったはずなのに、それを長期間にわたって怠ったから人手不足に追い込まれてしまったのであり、人手不足というのは倒産を引き起こした本当の原因ではなくて、倒産に至る過程で生じた結果の一つだと捉えた方がしっくりくるのです。
問題を先送りしてしまったことで……
それでは、なぜ事業の見直しを怠ると人手不足になるのか考えてみましょう。
経営環境が厳しい方向へ変化しているのに、何事もなかったかのように漫然と事業を継続していると、顧客にとって魅力が乏しくなることで収益性が悪化し、そのままでは付加価値額(この場合は売上高から原材料費を控除した額をイメージして下さい)が低くなっていきます。

そのため、事業を見直して収益性を回復させなければ、時間の経過とともに事業活動を継続することが難しくなるわけですが、デフレ経済が長く続いている状態だと、原材料費や人件費を低い水準で抑え込むことができるので、その影響を相対的に弱くすることが可能となり、問題を先送りすることができるのです。
しかし、この前提が崩れると事業活動に必要なコストを負担できないという問題が表出化することになるため、求職者や従業員が納得するような報酬額を提示することが難しくなり、やがては事業活動を継続するために必要な人員が確保できなくなります。
このように、倒産を引き起こした直接的な原因は、経営環境が厳しい方向へ変化しているのに、何事もなかったかのように漫然と事業を継続していたことであり、問題を先送りすることで事業再生に充てるべき時間を徒に浪費してしまったことなのです。
もちろん、日本では働き手が減っていることから、事業を継続するのに必要な人員を確保することが難しくなっていることは間違いありませんが、それは限られた資源をめぐって競争しているのだから避けられないことであり、それをもって人手不足で倒産する企業が増えていると報道するのは少しおかしい気がします。

それよりも、いつまでも事業再生に手をつけなかったことで時間切れとなった企業が増えていると報道した方が実態を正確に伝えられますし、倒産予備軍である企業の経営者に問題を先送りしないように注意喚起することにもなるはずです。
いずれにせよ、事業再生は早期に着手することで採れる選択肢が増え、それによって成功する確率が高まることになりますから、収益性が悪化しているという事実から目を背けない姿勢が大切になります。
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