ソフトウェアの処理に対する会計と税務の考え方の違い!(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その19)

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今回は、「費用性資産の処理(その4)」について考えてみたいと思います。

会計の観点からソフトウェアを分類すると……

中小企業の経営者であるあなたは、ソフトウェアの会計処理について、「ウチはIT企業じゃないから関係ないよ!」と単純に思い込んではいないでしょうか?

単純に思い込んでいませんか?

会計の観点からソフトウェアを分類すると、(1)受注制作のソフトウェア、(2)市場販売目的のソフトウェア、(3)自社利用のソフトウェアの3つに分けられますが、社内業務を効率的又は効果的に行う目的でソフトウェアを利用したり、第三者への業務処理サービス等を提供する目的でソフトウェアを利用したりする場合、それは(3)自社利用のソフトウェアに該当することになります。

そのため、あなたが経営している会社が、たとえソフトウェアの制作や販売を生業としていないとしても、社内業務を効率的又は効果的に行うことを目的としてソフトウェアを導入したりするのであれば、そのようなソフトウェアに関する支出については、(3)自社利用のソフトウェアとしての会計処理が要請されます。

研究開発費に該当する支出の取扱いが異なる!

一方、法人税法で要請されるソフトウェアの処理を見ると、会計基準で要請される処理と概ね変わりませんが、それでも、税務会計によって作成された決算書を使ってしまうことで……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その1)で述べたように、会計と税務では目的がそれぞれ異なっているので何かしらの違いは存在します。

会計と税務は目的がそれぞれ異なっています!

具体的には、(3)自社利用のソフトウェアであれば、研究開発費に該当する支出の取扱いについて、会計と税務では要請される処理がそれぞれ異なっているのです。

会計では、未だ将来の収益獲得又は費用削減になることが分からない段階での支出を研究開発費と捉え、これを期間費用として処理しなければなりませんが、将来の収益獲得又は費用削減になることが確実になった時点以降の支出については、費用と収益を期間的に対応させるという観点から無形固定資産として計上する(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針11項 資産計上することとなる自社利用のソフトウェアの取扱いを参照)ことが必要になります。

一方、税務では、将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかな支出は損金として処理することが認められます(法人税基本通達7-3-15の3 ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる費用を参照)が、そうでないものについては資産として計上することが必要になります。

つまり、将来の収益獲得又は費用削減になるかどうか不明な支出の取扱いについて、会計は費用として処理することを要請しているのに対し、税務は資産として処理することを要請しているのです。

会計で必要になる処理VS税務で必要になる処理

これは、会計が「支出の効果が将来に渡って発現するかどうか」という観点から、資産としての計上要件を厳密に検討することで資産か費用かを判断しているのに対して、税務は「税収の確保」や「課税の公平」という税制の目的から、課税される企業の都合によって恣意的な判断が行われないように資産か損金かを判断しているからです。

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