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今回は、「第三者への承継(その1)」についてお話ししたいと思います。
承継とは言うものの……
中小企業の経営者であるあなたは、もう後継者を決めているでしょうか?
ここまで「親族内承継」「親族外の役員・従業員への承継」について説明してきましたが、これらの事業承継方法によって後継者となる者を確保できないのであれば、廃業することを選択するか、もしくは「第三者への承継」による事業承継方法によって後継者となる者を確保しなければならなくなります。
ただ、あなたがファミリービジネス(=創業者一族が実質的に経営を担っている事業のこと)を営んでいることを前提とすると、この第三者への承継による事業承継方法はかなり異質な性質のものであるということは理解しておく必要があるでしょう。
というのも、第三者への承継というのは承継とは言うものの、親族内承継や親族外の役員・従業員への承継とは異なり、これまで営んできた事業を外部の第三者へ売却することを実質的には意味しているからです。
第三者への承継の危険性!
どの事業承継方法を選択すれば……(中小企業経営者のための事業承継!その6)では、関係者の理解を得られやすいかどうかという観点から、親族内承継→親族外の役員・従業員への承継→第三者への承継の順に事業承継方法を検討するべきだと述べました。
けれども、先ほどの述べたように第三者への承継が異質な性質のものであるという観点からも、第三者への承継は、親族内承継や親族外の役員・従業員への承継が選択できない場合に限って検討するべきものだと思います。
更に、最近の新聞記事やテレビ報道などを見ると、事業承継によるM&Aに関して、かなり悪質な買い手や仲介業者らによるM&Aの手法を利用した売り手への被害が発生しているようなので、第三者への承継を性善説の立場から安易に捉えることは危険であると理解しておくべきです。
確かに、第三者への承継のメリットは、親族内承継や親族外の役員・従業員への承継よりも広い範囲から後継者を選択できることで、経営者として必要な資質を兼ね備えつつ、経営権を引き継ぐために必要な資金を有している者を指名できる点にありますが、それは第三者への承継という事業承継方法そのものが自動的に保証するものではありません。
当然ながら、実際に選択した後継者が本当に経営者として必要な資質を兼ね備えつつ、経営権を引き継ぐために必要な資金を有しているのかは、売り手であるあなたが検証する必要があります。
現実問題として、親族や親族外の役員・従業員が後継者となることに二の足を踏んでいるのに、第三者の中に後継者になりたいと名乗りを上げる買い手がいるのだとすれば、それには何かしらの思惑があるはずであり、その思惑が何かを突き止める責任は経営者であるあなたにあるはずです。
そのため、第三者への承継という事業承継方法を選択するとしても、後継者候補の調査にはあなた自身も十分な時間をかける必要があり、結局、事業承継を成し遂げるには長い時間がかかることになります。
早く事業承継を完了して楽になりたい気持ちは分かりますが、そう思うのならもっと早く事業承継に着手すべきだったのであり、事業承継にかける時間そのものを短縮することで帳尻を合わせるのは間違いです。
次回は、「第三者への承継(その2)」について解説してみたいと思います。
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