費用性資産の処理を巡る会計と税務の違い!(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その16)

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今回は、「費用性資産の処理(その1)」について考えてみたいと思います。

費用性資産とは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、「費用性資産」というものを知っているでしょうか?

費用性資産を知っていますか?

費用性資産とは、企業資本の循環過程において投下された状態にあり、将来に渡って費用として解消するものをいいますが、具体的には、棚卸資産や固定資産などがこれに該当します。

又、費用性資産に対する概念として貨幣性資産というものもあり、こちらは、企業資本の循環過程において既に回収された状態か、回収過程や投下待機過程の状態にあるものをいいますが、具体的には、有価証券や売上債権などがこれに該当します。

現在では、同じ資産であるはずなのに、異なる概念を用いて別々に定義するのはおかしいという考えから、資産を企業の将来的便益であり、かつ、貨幣額で合理的に測定できるものだと定義する一元論が主流ですが、かつては、資産をそれぞれ貨幣性資産と費用性資産に分け、二元論の形で定義することが一般的でした。

貨幣性資産と費用性資産のイメージ図

何かしらの仮説に基づいて按分計算していることが多いので……

先ほど述べた定義からも分かるように、費用性資産とは、既に投下という形で支出がなされている(必ずしも現預金による支出に限定されないので注意!)のに、未だ費用や損金となって解消していないために資産として処理されているものを指します。

ただ、支出した額のうち、どれだけを費用や損金として処理し、その残りを資産として処理すべきなのかを明確に判断できる尺度のようなものが存在している場合は少ないため、何かしらの仮説に基づいて按分計算していることが多いというのが実態です。

例えば、以前に会計と税務、それぞれの立場から適切な耐用年数を考えてみると……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その4)で扱った減価償却は、固定資産の価値がどれくらい減少しているのかを物量的に測定することが容易にできるのであれば、費用や損金とすべき額を確定的に判断できますが、実際には難しいので何かしらの仮定計算によって処理をしています。

仮定計算によらざるを得ない……

そして、このことは「どちらの処理が正しいのか?」や「どちらの処理が優れているのか?」の答えを簡単には出せないことも同時に意味しているため、複数の処理を認めなければならない原因にもなっているのです。

一方、会計は企業の経営状態を把握し、これを利害関係者に報告するという目的を達成するために、客観性は担保しつつも、できるだけ報告を行う企業が置かれている環境を反映できるよう多様な処理を認め傾向があるのに対し、税務は「税収の確保」や「課税の公平」という税制の目的を達成するために、企業側の都合によって所得の額が変化しないよう課税される企業の裁量の余地をできるだけなくし、画一的な処理を求める傾向があります。

そのため、費用性資産の処理については、会計では認められるが税務では認められない処理が必然的に多くなり、法人税申告書を作成する際に調整する手間が省けるということは……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その2)で述べた「費用」だが「損金」とはならないものが生じる割合が高くなるのです。

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