本当はいろんな引当金があるのですが……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その15)

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今回は、「その他の引当金(その4)」について考えてみたいと思います。

会計基準ではなく研究資料という位置づけではありますが……

貸倒引当金だけが引当金というわけではないのですが……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その12)でも述べたように、会計の立場からは貸倒引当金だけが引当金というわけではなく、下記に示す4要件を満たす限り、該当する引当金の計上が必要になります。(計上できるではなく、計上しなければならないという点に注意!)

(1)将来の特定の費用又は損失であること

(2)その費用又は損失が当期以前の事象に起因して発生するものであること

(3)発生の可能性が高いこと

(4)その金額を合理的に見積ることができること

計上しなければならない……

ただ、どのような場合にどのような引当金の計上が必要なのかは、かなり会計に詳しくないと上記の4要件だけで判断するのは難しいので、どのような内容の引当金があるのかを例示したものがあると助かりますよね。

そこで、会計基準ではなく研究資料という位置づけではありますが、平成25年6月24日に日本公認会計士協会が公表した『我が国の引当金に関する研究資料(会計制度委員会研究資料第3号)』が参考になります。

この研究資料には、ケース1の賞与引当金からケース26の災害損失引当金まで多岐にわたる引当金が紹介されていますが、これらは公表時点における引当金に対する考え方を例示したものに過ぎません。

そのため、前回のポイント引当金として処理できなくなったことで……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その14)で説明したポイント引当金のように、最新の考え方が反映できていないものを記載していたり、会計基準や実務指針として利用するにはかなり記述が不足していたりします。

しかし、どのような引当金の計上が必要なのかを検討する際の参考資料として利用するには十分な内容であり、これらの説明を軽く読むだけでも該当する引当金のイメージができるはずです。

引当金のイメージはできるはずです!

該当する引当金を計上しないということは……

繰り返しになりますが、会計の立場からは上述した引当金の4要件を満たす限り、該当する引当金の計上が必要になります。それなのに、該当する引当金を計上しないということは、その分だけ利益を多く計上してしまうことになり、そのままでは企業の経営状態を本来の実力よりも過大に評価してしまう危険があります。

但し、税においては、これらの引当金の計上による損金算入を認めていないので、これらの引当金の計上を行い、法人税額を算定する際に差額を法人税申告書で調整するという本来の方法を採用すると、有税処理(=税務上は損金として認められなくても、会計上は費用として処理すること)を行わなければなりません。

故に、有税処理を避けつつも、致命的な判断ミスを回避するための方法として、税務では貸倒損失として処理することが認められなくても……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その11)でも示したように、企業外部に提出する決算書は「税務会計」によって作成し、企業内部で経営判断に利用するためだけの決算書を「管理会計」の範疇で別に作成するという方法を検討してみるべきです。

税務会計を採用する場合の次善策

次回は、「費用性資産の処理(その1)」について解説したいと思います。

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