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今回は、「親族外の役員・従業員への承継(その2)」についてお話ししたいと思います。
後継者が買取資金を用意しなければならないが……
前回の親族外の役員・従業員への承継が増えている?(中小企業経営者のための事業承継!その12)では、親族外の役員・従業員への承継について、経営権(会社支配権を有している現経営者が保有している全ての議決権のある株式のこと)と共に事業を承継する方法を選択する場合、後継者が経営権を引き継ぐための買取資金を用意しなければならないという問題があることを説明しました。
もちろん、かなり前から親族外の者が後継者に指名されることが分かっていて、その者が経営権を引き継ぐための買取資金をコツコツと貯める時間があるなら話は別ですが、そのようなケースは稀でしょうから、実際には短期間で買取資金を用意しなければならなくなるはずです。
あと、事業承継した後に何かしらの手段を講じることで買取資金を用意するという方法も考えられますが、それらが思惑通りにいかないと、「所有と経営の分離」の状態が長く続いてしまうことになるので、個人的にはおすすめできる方法ではありません。
そこで、この問題を解決する方法としては、事業承継する役員や従業員が新会社を設立し、ファンドや金融機関などから資金を調達して、現経営者から経営権を取得するMBO(役員が株式を取得すること)やEBO(従業員が株式を取得すること)を実行する方法が挙げられます。
但し、EBOによる場合には、MBOによる場合と違って、これまで自分の部下であったり、同僚であったりした者が、ある日を境に自分の会社の経営者となってしまうため、このような事実を受け入れられない者が辞めてしまう危険があるので注意が必要です。
尚、MBOやEBOによる場合であっても、経営承継円滑化法(正確には「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」です!)が定める要件を満たすことができるのであれば、同法によって通常の場合よりも有利な条件で、日本政策金融公庫や信用保証協会の金融支援制度を利用することができます。
相続や贈与による方法も考えられるが……
他にも、現経営者が経営権の有償譲渡にこだわらないのであれば、相続や贈与による方法で自身が有する経営権を親族外の役員や従業員に承継させる方法が考えられます。
というのも、平成25年度の税制改正によって、経営承継円滑化法に基づく「事業承継税制」の対象は親族外の役員や従業員にまで拡大されているので、これを利用することができるような要件が整っているのであれば、相続や贈与によって一時的に多額の税金支払いが生じるのを回避できる可能性があるからです。
しかし、親族外の役員・従業員への承継が意外に難しいとされているのは、事業承継する相手が知っている者であるために、かえって現経営者の親族とのわだかまりが生じやすいという点にあるのですから、相続や贈与の方法によって現経営者の経営権を親族外の役員や従業員に承継させるのは、現経営者の親族と揉めないことが明らかであるような場合に限定するべきでしょう。
(自分たちに事業承継する意思がなくても、それは家業に対して愛着がないことを意味するわけではないということですね……)
次回は、「親族外の役員・従業員への承継(その3)」について解説してみたいと思います。
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