銀行と証券会社の連携に向けての規制緩和が必要なのだとしても……(地方銀行は大丈夫なのか?その13)

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今回は、「優越的地位の濫用」について考えてみたいと思います。

ファイアウォール規制に違反しているということは……

少し前になりますが、2024年6月24日に金融庁が、三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱UFJモルガン・スタンレー証券及びモルガン・スタンレーMUFG証券、三菱UFJ銀行に対して、「ファイアウォール規制(同じ企業グループに属する銀行と証券会社の間での顧客の非公開情報の共有を制限するもの)」に違反したことを理由に行政処分等を行ったことが新聞各紙で報じられました。

SMBC日興証券株式会社及び株式会社三井住友フィナンシャルグループでも同じようなことがあったような……

一見すると、同じ企業グループとして銀行業と証券業を兼務していたことが問題として取り沙汰されているようにも思えるのですが、この問題の本質は「優越的地位の濫用」が懸念されるような違反がなされたという点にあります。

つまり、銀行から融資を受けている企業の立場からは、そもそも融資を受けているという関係性から弱い立場に置かれているのに、更に、銀行と同じ企業グループ内の別の会社に自社の内部情報が筒抜けになっているようだと、その会社からの営業提案に抗うことが難しく、企業にとっては望まない取引をさせられる危険があるということなのです。

銀行の業務範囲や出資規制などの見直しによる一連の規制緩和の中で……

銀行の業務範囲や出資規制などの見直しがされるということは……(地方銀行は大丈夫なのか?その10)では、2021年5月19日に改正銀行法が成立し、銀行や銀行の子会社・兄弟会社である銀行業高度化等会社が、デジタル化のための業務や地方創生など持続可能な社会の構築に資する業務などを行えるように業務範囲や出資規制などの見直しがされたことを説明しました。

業務範囲や出資規制などの見直しが必要であることは理解しますが……

上述した三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の銀行と証券会社が違反した「ファイアウォール規制」は、このような銀行の業務範囲や出資規制などの見直しによる一連の規制緩和の中で、優越的地位の濫用を防ぐためには今後も引き続き検討が必要であるとして、2021年の銀行法改正時には規制緩和が見送られていたものです。

(但し、顧客が上場企業や上場準備会社などの場合には、その後の内閣府令等の改正により、あらかじめ顧客にその情報を共有する旨を通知した上で、顧客が停止を求めるまでは情報共有に同意したとみなす「オプトアウト」の方法が導入されており、実質的には規制緩和がなされています。)

それなのに、今回の三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の銀行と証券会社が起こしたファイアウォール規制に対する違反は、顧客側が情報共有を再三にわたり拒否したにも関わらず、銀行と証券会社内で情報共有がなされていたと新聞各紙で報じられているので、優越的地位の濫用までは認められなかったものの、かなり深刻に受け止めるべき問題だと考えられます。

そのため、今回の件を受けて、銀行と証券会社の連携に向けての規制緩和の議論が後退するのは当然のことだとしても、上場企業や上場準備会社などよりもずっと立場が弱い中小企業にとっては、それ以外の場面においても優越的地位の濫用を防ぐための規制の必要性が改めて問われる機会にもなったはずなので、今後は現在よりも中小企業の利益が守られる形で規制緩和の議論が進むかもしれません……

何でもかんでも規制緩和をすれば良いという訳ではありません!

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