損金算入が認められなくても引当金の計上を行うべきか?(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その13)

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今回は、「その他の引当金(その2)」について考えてみたいと思います。

以前は損金算入が認められていた引当金も……

前回の貸倒引当金だけが引当金というわけではないのですが……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その12)では、中小法人等*1や銀行、保険会社などが貸倒引当金を計上する場合を除き、税務上は引当金を計上しても損金算入が認められないという説明をしましたが、以前は損金算入が認められていた引当金もありました。

*1期末資本金の額や出資金の額が1億円以下の法人(資本金の額や出資金の額が5億円以上である法人等による完全支配関係がある子会社等を除く)のこと。

例えば、「賞与引当金」の計上による損金算入は、平成10年度の税制改正によって廃止されるまでは認められていましたし、「退職給与引当金」の計上による損金算入は、平成14年度の税制改正によって廃止されるまでは認められていました。

(税収増加による)財源確保が改正の理由とされています!

ちなみに、賞与引当金とは、まだ支給額は確定していないが、次期以降に支払われる予定の従業員に対する賞与について、適正な期間損益計算を行うという観点から当期に帰属させるべき金額を費用として処理するために設定される貸方勘定のことです。

一方、退職給与引当金とは、まだ支給額は確定していないが、次期以降に支払われる予定の従業員に対する退職給与*2について、適正な期間損益計算を行うという観点から当期に帰属させるべき金額を費用として処理するために設定される貸方勘定のことです。

*2厳密には、退職給与は退職一時金制度に係るものだけが対象であり、企業年金制度から給付される退職年金も対象に含める場合には退職給付となる。

会計と税務では目的がそれぞれ異なっているので……

ただ、税制改正された後であっても、適正な期間損益計算を行うという観点からは、これらの引当金の計上が必要となるという点はこれまでと変わりがありません。

つまり、賞与や退職給付に伴う支出そのものは将来に生じるとしても、その原因となる労務の提供という行為は当期に生じているので、企業の経営状態を把握し、これを利害関係者に報告するという会計本来の目的を達成するためには、その事実を会計上も何かしらの形で反映させる必要があるわけです。

賞与引当金の計上のイメージ

そのため、「財務会計」では引当金を計上するという会計処理を行い、その後で法人税申告書を作成する際に調整を行うという手順を踏むことが必要となり、一見すると、煩雑であるだけでなく、企業の側にかなり酷な手続きを強要しているという印象を与えます。

しかし、会計と税務では目的がそれぞれ異なっていることを考慮すると、そのような手続きには必然性があり、中小企業の経営者であるあなたが、決算書を自社の経営状態を正しく把握するために利用したいと思うのならば、「財務会計」により作成された決算書を使う必要があります。

逆に、「税務会計」では税法の要請に適った形で会計処理をするので、その後の法人税申告書を作成する際に調整を行う手間を省くことができますが、そもそも引当金を計上するという会計処理を行わないので、「税務会計」で作成された決算書を使って自社の経営状態を把握するのは避けるべきです。

次回は、「その他の引当金(その3)」について解説したいと思います。

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