二重価格(インバウンド価格とローカル価格)を導入するべきなのか?(中小企業だからこそできる価格戦略!その11)

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今回は、「二重価格(インバウンド価格とローカル価格)の導入に対する是非」について考えてみたいと思います。

インバウンド需要が好調なことで……

中小企業の経営者であるあなたは、「二重価格(インバウンド価格とローカル価格)」の導入に対して肯定的でしょうか?それとも、否定的でしょうか?

肯定的でしょうか?それとも、否定的でしょうか?

ちなみに、ここで言う二重価格(インバウンド価格とローカル価格)とは、製品やサービスを購入する相手が海外からの旅行者なのか、それとも、地元民や国内旅行者なのかによって販売価格を変えることを指しますが、インバウンド需要が好調なことから、このような二重価格(インバウンド価格とローカル価格)のあり方をめぐって議論が起こっているようです。

実際の市場では、経済学の基本概念である「一物一価の法則*1」が成立しないことは珍しくありませんが、それでも、ある時点でほぼ同じ製品やサービスが同じ場所で取引されているのに、販売する相手によって販売価格が大きく違うというのは取引の公平性を疑わせる(厳密には、消費者に不公平であるような印象を与えてしまう)ために問題があるように思えます。

*1完全競争市場では、同じ時点の同じ市場で取引される同じ製品やサービスは同一の価格に定まることを示した経済学の原則のこと。

しかし、歴史的な円安が進行したことなどの理由により、海外からの旅行者と地元民や国内旅行者で(平均的な)購買力に大きな差が生じているという実態を踏まえれば、イメージとしては下図のような状態であると考えられ、海外からの旅行者が適正と感じるような販売価格まで価格を引き上げることには一定の経済合理性があり、単純に「ぼったくり」だと決めつけることはできないでしょう。

インバウンド価格とローカル価格のイメージ図

インバウンド価格とローカル価格に分けるべきか?

おそらく、二重価格(インバウンド価格とローカル価格)の導入に否定的な人たちは、販売価格をインバウンド価格とローカル価格で分けるよりも、ローカル価格で統一した方が海外からの旅行者への好感度が高まることで販売量が増え、日本経済全体で見た場合に有利だと無意識に考えているのだと推測されます。

けれども、このような思考の背景には「薄利であっても数をこなすことで十分に利益を確保できる」という発想が隠れており、日本が高度経済成長期であった頃ならば通用したかもしれませんが、現在のように社会全体として成熟化が進んでいるような状態では健全な考え方とは思えません。

それよりは、海外からの旅行者への販売数量は減ってしまっても、正々堂々と二重価格(インバウンド価格とローカル価格)を導入して、それぞれの消費者に応じた販売価格を設定した方が、日本経済全体で見た場合の経済厚生*2を最も高めることができるはずです。

*2経済的な観点から見た満足の度合いのこと。

そうだとすると、二重価格(インバウンド価格とローカル価格)の導入に正当性を持たせるためにも、根拠となる基本的な前提については順守することが重要であり、海外からの旅行者なのか、それとも、地元民や国内旅行者なのかが外観だけでは分かりにくい場合にどう対応するべきなのかを明瞭な形で詰めておく必要があります。

あくまでも、どうするのかを決めるのは経営者であるあなたです!

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