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今回は、「貸倒処理(その1)」について考えてみたいと思います。
貸倒処理についても関心を持たないと……
中小企業の経営者であるあなたは、売上債権などの貸倒リスクが企業経営に与える影響について考えてみたことはあるでしょうか?
あくまでも私自身の経験による感想にはなりますが、中小企業の経営者の多くは売上債権などの貸倒リスクを気に留めていないのではないかという印象があります。
というのも、経営者の方と会話をしていても、前回まで説明していた減価償却の場合と異なり、貸倒処理できるかどうかについては関心があまりないように思えることが多いからです。
もしかしたら、貸倒処理をするというのは自社の与信管理に甘さがあったことを意味するので、経営者としては認めたくないという心理が働くのかもしれませんが、仮にそうであったとしても、関心を示さなくても構わないという理由にはなりません。
それどころか、問題を先送りしてしまうことで、本来なら避けられたかもしれない貸倒リスクを見逃してしまうことにも繋がりますから、減価償却と同じように、経営者は貸倒処理についても関心を持つことが必要です。
尚、ここでいう貸倒処理とは売上債権などの回収不能額を費用として計上することを指しますが、貸倒れが生じた後に行われる処理だけでなく、貸倒れが生じる前に見積額を引当計上する処理などもこれに含みます。
会計と税務では目的が異なることから……
貸倒処理が一般的な経費を処理する場合と大きく異なるのは、その気になれば処理を先延ばしにすることが可能だという点でしょう。
なぜなら、一般的な経費は発生する際に支出を伴うために、支出という事実を何らかの形で会計処理しないと経理業務を行う際に辻褄が合わなくなってきますが、貸倒処理の場合は収入の見込みに対する修正を財務情報に反映させることなので、そのような会計処理を延期しても経理業務を行う際には無視できるからです。
しかし、企業の経営状態を正確に把握し、これを利害関係者に報告するという会計の立場からは、高い確率で回収不能になることが分かっていたり、実質的に回収不能であると判断できるような実態があったりするのに、まだ確定していないことを理由に処理を先延ばしすることは許されません。
一方、「税収の確保」や「課税の公平」といった税制の目的を達成するためには、各々が自由に貸倒処理することを認めてしまうと、恣意的に損金を計上することが可能となり、又、課税の対象となる所得の額も少なくなってしまうので、厳格な計上要件を設けて慎重に処理させることが必要です。
このように、会計と税務では目的が異なることから、望ましい貸倒処理のタイミングは必ずしも一致せず、場合によっては処理すべき額についても違いが生じる可能性があります。
そのため、できるだけ税法の要請に沿うような形で処理が行われる「税務会計」によって作成された決算書を経営判断に利用していると、経営状態を正しく把握できないことから致命的な判断ミスを犯してしまう危険が高まるのです。
次回は、「貸倒処理(その2)」について解説したいと思います。
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