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今回は、「減価償却(その3)」について考えてみたいと思います。
そもそも、減価償却というのは……
中小企業の経営者であるあなたもご存知のように、減価償却方法には「定額法」や「定率法」など複数の方法が認められています。
これは、減価償却というのは、一部の例外を除いて、実際に固定資産の価値がどのように減少しているのかを確かめることは難しいので、その代わりに妥当と認められる価値減少の仮定に基づいて疑似的な評価をしているに過ぎず、そのような性質上、制度として減価償却方法を一つに絞り込むことができないからです。
ちなみに、「定額法」では、固定資産の価値がそれぞれの期に同額だけ減少すると仮定して計算を行うのに対し、「定率法」では、固定資産の価値が当初は大きく減少するが、年数が経過するにしたがって減少する額が逓減していくと仮定して計算を行うことになります。
このように、前回まで説明していた耐用年数の場合と違い、あくまでも仮定計算にすぎない減価償却方法をわざわざ会計と税務で変える必然性はあまり高いとは思えませんが、それでも、税務上は認められている減価償却方法が限られており、又、それらを適用する場合の要件も細かく定められていますので、減価償却方法を会計と税務で変えた方が望ましい場合はあり得ます。
税務上は「定額法」のみに一本化されたとしても……
減価償却って絶対しないとダメなんでしょうか?(あなたの減価償却は間違っている?その5)でも少し触れましたが、税務上、平成28年4月1日以後に取得する鉱業用ではない建物附属設備及び構築物の償却方法については「定額法」のみに一本化されました。
そこで、これらの固定資産について、税務上は「定額法」により減価償却を行わなければなりませんが、これまで「定率法」によって減価償却を行っていたことに極めて高い合理性が認められるような事情があったのだとすれば、会計上はこれまで通り「定率法」により減価償却を行うべきでしょう。(但し、法人税申告書を作成する際に調整は必要となりますが……)
例えば、対象となる建物附属設備や構築物の収益獲得への貢献度合いが、当初はとても大きいのに、年数が経過するにしたがって急速に小さくなることが判明しているような場合、正しい利益を算定するという目的を達成するためには「定額法」よりも「定率法」の方が望ましいということになるはずです。
又、対象となる建物附属設備や構築物に対する修繕費やメンテナンス費用が、当初はとても安いのに、年数が経過するにしたがって急速に高くなることが判明しているような場合、減価償却費と修繕費やメンテナンス費用を合わせた費用を平準化し、それ以外の損益の増減額がよく分かるようにするという目的を達成するためには「定額法」よりも「定率法」の方が望ましいということになるはずです。
そのため、このような場合に減価償却方法を会計と税務で変えないのだとすれば、「定率法」と「定額法」の違いに相当する部分が会計情報には反映されないことになりますから、それが経営判断に何かしらの影響を及ぼすことは否定できません……
次回は、「減価償却(その4)」について解説したいと思います。
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