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今回は、経営判断と二つの会計との関係について考えてみたいと思います。
設備投資に対する経営判断を巡って……
中小企業の経営者であるあなたは、設備投資に対する経営判断で「う~ん」と思ってしまった経験はあるでしょうか?
例えば、多角化などの目的で、新規事業を開始するために設備投資をしなければならないような場合、その場の思いつきだけで経営判断を行っていたら、よほどの幸運にでも恵まれない限り、設備投資をした後に当該事業で損失を計上してしまう可能性は高くなるはずです。
そこで、できる限り損失の計上を回避したいのであれば、事前に設備投資の経済性に関する情報を収集し、正味現在価値法(NPV法)や内部利益率法(IRR法)、回収期間法などの評価方法を利用することで意思決定を行う必要があります。
しかし、それでも人間は未来を完全に見通すことはできないため、このような事前の対策を講じていたとしても、必ずしも目論見通りにいくという保証はありません。
一方、設備投資を行った後、他の事業が好調であっても、当該事業が複数年に渡って赤字が続いているようだと、(実際には上場企業の場合だけということにはなりますが……)減損会計を適用して減損損失を計上しなければならなくなるので、設備投資に対する経営判断が甘かったことを外部の利害関係者に知られてしまうことになります。
そもそも経営と会計の関係は……
上述のような説明をすると、設備投資に対する経営判断への会計の冷徹なスタンスが際立ってしまうのですが、そもそも経営と会計の関係は、お互いに対立するような関係ではなく、お互いの役割を補完しあうような関係にあります。
つまり、設備投資に対する経営判断と二つの会計との関係ついて考察してみると、設備投資を行う前については、管理会計*1が経営者の経営判断を支援するという関係にあり、設備投資を行った後については、制度会計*2が経営者の経営判断の結果を会計情報の形で外部に報告するという関係にあります。
*1経営者の意思決定や経営管理などに役立てるために行われる会計のことです。
*2外部の利害関係者のために会社法などの法律によって行われる会計のことです。
そのため、設備投資に対する経営判断をできるだけ適切に行いたいのであれば、完全な予測はできなくても管理会計による支援は欠かせないことになりますし、又、経営判断を誤ったような場合にも管理会計が提供する情報は事後の検証の際に重要となります。
それに、制度会計が減損損失の計上を要請していることについても、たとえ減損損失の計上を留保したとしても、それ以降の業績にマイナスの影響を与え続けることは避けられず、それならば、早期に失敗を認めた方がその後の経営判断の選択の幅を広げられるので望ましいと考えるべきです。
まあ、中小企業の場合には、減損会計を適用して減損損失を計上したとしても、税務上は損金として認められないことから、あえて減損会計を適用するようなことはないと考えられますが、企業の経営実態を正確に把握しておきたいのであれば、企業内部だけで利用する情報として減損損失を把握しておくことは有益だと思います。
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