中小企業が差別化戦略を行う際には……(差別化戦略なんて中小企業ができるのか?その5)

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今回は、「差別化と価格競争」についてお話ししたいと思います。

なぜ、熾烈な価格競争を回避することができるのか?

中小企業の経営者であるあなたは、なぜ、「差別化戦略」が上手くいけば、熾烈な価格競争を回避できるのか考えてみたことはあるでしょうか?

なぜ、回避できるのか?

実は、「差別化戦略」が熾烈な価格競争を回避することができるのは、他との違いを際立たせることが新たな市場を開拓することに繋がるだけでなく、それは同時に、開拓した市場に対する参入障壁としても機能するからです。

つまり、他との違いを際立たせることが顧客の囲い込みを可能にするので、不完全競争の一形態である独占的競争の状態を生むことになり、「差別化戦略」を成功させた企業には価格支配力(=当該市場で価格を決めることができる力)が生じるのです。

但し、「差別化戦略」を成功させた企業に価格支配力が生じるとしても、価格を高くすると、それに呼応して販売量は減少してしまうので、売上高や利益を最大化したいと思うのであれば、全く自由に価格を決められるというわけではありません。

それに、せっかく「差別化戦略」を採用しても、簡単にマネされてしまうようだと、前回の差別化戦略を採用する際には……(差別化戦略なんて中小企業ができるのか?その4)でも説明したように、肝心な“他との違い”が埋没してしまうことになるため、参入障壁としても機能しなくなります。

簡単にマネされてしまうようだと参入障壁としても機能しません!

差別化戦略による参入障壁を十分に機能させるためには……

それでは、簡単にマネされるのを防ぐことができるのであれば、「差別化戦略」による参入障壁が十分に機能するのかというと、残念ながら、そういうわけにもいきません。

なぜなら、差別化の規模を大きくしてしまうと……(差別化戦略なんて中小企業ができるのか?その2)でも述べたように、「差別化」によって創り出そうとしている「他との違いの程度(以下、異質性と呼称します)」は、対象を広げれば広げるほど、異質性の内容が曖昧になってしまい、異質性の持つ訴求力がどんどん弱くなってしまうからです。

これは、裏を返せば、「差別化戦略」による参入障壁を十分に機能させたいのであれば、「差別化」が行われる対象の広さを異質性の持つ訴求力が弱くならない範囲内に収める必要があることを意味しています。

もちろん、資金的に余裕があるのであれば、優秀な人材を投入して研究開発に注力したり、精力的にプロモーション活動を行ったりするなど、異質性の持つ訴求力が弱くならないような対策を講じることで対象を広く設定することは可能です。

しかし、そのような対策を講じるための資金的な余裕がないのに対象を広く設定してしまうと、異質性の持つ訴求力が弱くなりすぎて顧客に魅力を感じてもらえなくなる可能性が高くなり、それでも顧客に自社を選択してもらうためには価格で勝負をするぐらいしか方法がなくなります。(だからこそ、熾烈な価格競争になってしまうのですが……)

異質性の持つ訴求力のイメージ2

そのため、資金的に余裕がない中小企業が「差別化戦略」を行う際には、熾烈な価格競争を回避するという観点からも、異質性の持つ訴求力が弱くならない範囲内で「差別化」が行われる対象の広さを設定するよう心掛けなければなりません。

次回は、「差別化の対象になる人たち」について解説してみたいと思います。

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