損益法と財産法の関係、貸借対照表を重視するようになったことで……(中小企業経営者のための決算書入門!その16)

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今回は、「期間利益を計算する2つの方法」についてお話ししたいと思います。

損益法とは何か?財産法とは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、期間利益の計算方法が2つあるのをご存知でしょうか?

ちなみに、ここでいう期間利益とは、最終的な利益である当期純利益のことだと思ってください。

期間利益の計算方法が2つある……

一つめは、あなたもご存じであろう「期間収益-期間費用=期間利益」という算式によって期間利益を計算する方法ですが、これは「損益法」と呼ばれています。

損益法は「損益計算書」で行われますが、日本の会計基準によって損益計算書が作成される場合には、損益計算書、最も重視すべき利益は……(中小企業経営者のための決算書入門!その4)でも解説したように、「当期純利益」だけでなく、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」という他の利益も段階的に表示されるという特徴があります。

二つめは、「期末純資産-期首純資産=期間利益」という算式によって期間利益を計算する方法ですが、これは「財産法」と呼ばれています。

尚、増資や減資などの資本取引があった場合には、期間利益の計算に影響を及ぼさないように考慮する必要があります。

財産法については、「貸借対照表」よりも「株主資本等変動計算書」を見たほうが計算の仕組みを理解しやすいと思います。

「株主資本等変動計算書」を見たほうが理解しやすいでしょう!

当期純利益は一致する関係にあるのだが……

試算表と貸借対照表及び損益計算書の関係とは?(中小企業経営者のための簿記会計入門!その5)でも解説したように、複式簿記においては、損益計算書によって計算される当期純利益と貸借対照表の純資産の中に組み込まれている当期純利益は一致する関係にあります。

これだけを見ると、損益計算書によって計算される当期純利益と貸借対照表の資本取引を除いた期末純資産と期首純資産の差額はいつも一致する(=クリーン・サープラス関係が成立する)ように思えます。

しかし、このような関係が常に成立するためには、貸借対照表の資本取引を除いた期末純資産と期首純資産差額の全てが当期純利益になることを保証しなければなりません。

つまり、貸借対照表に計上されている資産や負債の評価・換算差額などが、損益計算書を経由せずに貸借対照表の純資産の部に直入されるようなことがあれば、その分だけ損益計算書によって計算される当期純利益貸借対照表の資本取引を除いた期末純資産と期首純資産差額との間で乖離が生じることになるのです。

実際、損益計算書を重視する日本の会計基準においても、会計ビッグバン以降は貸借対照表を重視する傾向が強まったことで、「その他有価証券評価差額金」などを資本直入方式によって処理するようになり、損益計算書によって計算される当期純利益と貸借対照表の資本取引を除いた期末純資産と期首純資産の差額が一致しない場合が生じるようになりました。

そこで、連結財務諸表においては、「包括利益」という概念を導入し、利益概念を拡張することで、両者が一致するような工夫が行われています。

包括利益の説明図

次回は、「会計方針が決算書にもたらす影響」について解説してみたいと思います。

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