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今回は、設備投資の意思決定をする際にリスクを反映する方法についてお話ししたいと思います。
リスクとは何か?
中小企業の経営者であるあなたは、「リスクとは危険のこと」だと決めつけていないでしょうか?
確かに、日常でリスクという言葉を使う場合には、「危険である」とか「上手くいかない可能性が高い」といった意味で使われることが多いのですが、設備投資の意思決定をする際にリスクという言葉を使う場合には、「不確実性の程度」という意味で使われます。
例えば、以下のような条件の投資案Aと投資案Bがあったとします。
<投資案A>
設備投資をした後に、10%の確率で10百万円、20%の確率で20百万円、40%の確率で30百万円、20%の確率で40百万円、10%の確率で50百万円の現金流入が生じます。
<投資案B>
設備投資をした後に、20%の確率で20百万円、60%の確率で30百万円、20%の確率で40百万円の現金流入が生じます。
そこで、投資案Aと投資案Bを比較した場合、投資案Aを選べば現金流入額は10百万円から50百万円まで生じる可能性があるのに対し、投資案Bを選べば現金流入額は20百万円から40百万円までしか生じる可能性がありません。
つまり、両案を比較すると、投資案Bの方が不確実性の程度は低く、リスクは低いという結論になるわけです。(上図を見れば、直感的に理解できると思いますが……)
リスク回避的な意思決定を行いたいのなら……
このように、設備投資の意思決定をする際にリスクを反映するには、確率に応じた現金流入額の散らばり具合を考慮できるような工夫をすればよいわけですが、先ほどの投資案Aと投資案Bのどちらかを自由に選択できるとしたら、あなたはどちらを選択するでしょうか?
今回の設例の場合、リターンを意味する投資案Aの期待値は10百万円×10%+20百万円×20%+30百万円×40%+40百万円×20%+50百万円×10%=30百万円となり、投資案Bの期待値は20百万円×20%+30百万円×60%+40百万円×20%=30百万円となるので、どちらの案を選んでも同額であり、合理的な判断をするならば、リスクが低い投資案Bを選択するべきという結論になります。
しかし、複数の投資案が存在する場合、一般的には「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」の関係が成立することが多いので、ハイリスクであってもハイリターンを望むのか、それとも、ローリターンであってもローリスクを望むのかによって、どの投資案を選択するべきかの結論は変わってきます。
尚、リスク回避的な意思決定を行いたいのならば、「正味現在価値法(NPV法)*1」や「内部利益率法(IRR法)*2」による場合には、判断基準となる割引率を高く設定し、「回収期間法*3」による場合には、判断基準となる回収期間を短く設定する必要があります。
*1設備投資をすることで増加する年々の増分現金流入額を予測し、更に、これらの現在価値合計から設備投資額を差し引くことで正味現在価値を算定し、この正味現在価値の大きさによって、設備投資を行うかどうかを判断する評価方法のことです。
*2設備投資をすることで増加する年々の増分現金流入額の現在価値が、設備投資額の現在価値と等しくなるような利益率を算定し、この利益率の大きさによって、設備投資を行うかどうかを判断する評価方法のことです。
*3設備投資をすることで増加する年々の増分現金流入額を予測し、設備投資に要した額を何年で回収できるのかを算定することによって、設備投資を行うかどうかを判断する評価方法のことです。
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