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今回は、「ジョブ型雇用」の導入が組織に与える影響についてお話ししたいと思います。
ジョブ型雇用を全面的に導入するということになれば……
中小企業の経営者であるあなたは、「ジョブ型雇用」の導入に前向きでしょうか?
ちなみに、ジョブ型雇用とは、採用時に職務の内容や勤務地などが明確にされる雇用形態のことですが、ジョブ型雇用の導入に前向きな中小企業の経営者は多いけど……(中小企業の人材活用術!その11)でも説明したように、成果主義とは明らかに違うものです。
そのため、ジョブ型雇用を導入しても、成果を評価するための明確な基準が設定できなければ、従業員のモチベーションを下げてしまう危険があります。
しかも、ジョブ型雇用を全面的に導入するということになれば、それまでは曖昧だった従業員それぞれの役割を明確にすることを意味しますから、組織における「分業のあり方」や「調整の仕方」を見直す必要が生じます。
例えば、これまで専任の従業員がおらず、手が空いている従業員が自主的にカバーしている業務があったとしたら、どの従業員にとっても職務の範囲外となるので、新たに担当者を決めなければならず、これまでのように兼務してもらうとしても、兼務をする際の条件などを事前に明らかにし、新たに契約を締結する必要があるでしょう。
大企業の場合ならまだしも、中小企業の場合には……
組織論の視点からジョブ型雇用を導入することの影響について考えてみると、従業員の人数が多い大企業の場合には、専門化を徹底できるなどのメリットの方が大きいかもしれませんが、従業員の人数が少ない中小企業の場合には、職務が硬直化することによって生じる弊害の方が深刻だと思います。
もちろん、ジョブ型雇用を導入するとしても、専門性の高い職務に限定するなどすれば、中小企業であってもジョブ型雇用によるメリットを享受しつつ、ジョブ型雇用による弊害を抑えられる可能性は高いです。
しかし、ジョブ型雇用の適用を受ける人とそうでない人との間で待遇に差がありすぎると、従業員の間で対立が生じる可能性がありますし、たとえ一部であってもジョブ型雇用を導入することは、続、組織は戦略に従う。(中小企業経営者のための組織論入門!その5)で説明した「機械的組織」や組織として合理的に行動するために……(中小企業経営者のための組織論入門!その6)で説明した「官僚制組織」に組織構造を近づけることになり、従業員の自主性を大きく損なう危険があります。(酷い場合には、従業員どうしで協力することすらしなくなる可能性があります。)
それに、中小企業の場合、どうしても従業員の人数の少なさによる不利を従業員の能力の高さによって補う必要があるので、従業員にあらゆる業務を経験させて適性を見極めると共に、広い視野を持ってもらうための機会を設けなければなりません。
以上のことから、中小企業の場合には、ジョブ型雇用の導入は慎重に検討する必要があるでしょう。(もし、賃金を上げたくないというのが本音だとしたら、他の手段を検討した方が無難です……)
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