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今回は、「資本と利益の区別の原則」について解説したいと思います。
「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し」とは?
中小企業の経営者であるあなたは、資本と利益の境界について考えてみたことはあるでしょうか?
「資本と利益の区別の原則」では、『企業会計原則』の一般原則三において「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」と規定し、資本と利益を区分することを要請していますが、実は、規定の前半部分と後半部分では区分の内容が異なっています。
例えば、期首の時点で純資産が1,500万円あり、期中に事業を行った結果、期末の純資産が2,500万円になった場合を想像してみてください。
この場合、当期の利益は、期末の純資産2,500万円から期首の純資産1,500万円を差し引いた1,000万円ですよね。
つまり、適正な期間利益を計算するという観点から資本と利益を区別すれば、資本に相当する部分は1,500万円となり、利益に相当する部分は1,000万円となるわけです。
又、他にも期中に500万円の増資があったとしたなら、当期の利益は1,000万円ではなく、期末の純資産2,500万円から期首の純資産1,500万円と増資した500万円を差し引いた500万円となります。
尚、このような考え方は、「資本と利益の区別の原則」の「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し」という規定の部分と整合することになります。
ちなみに、資本取引とは、資本そのものを直接的に増減させることを目的とする取引のことであり、損益取引とは、資本を運用して利益を獲得することを目的とする取引のことです。
「特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」とは?
それでは、先ほどの例題の期末の純資産の内、1,000万円は資本金として拠出されたものであり、500万円は過年度の留保利益(=利益剰余金)だったという場合を想像してみてください。
この場合、処分可能な利益は、期末の純資産2,500万円から資本金1,000万円を差し引いた1,500万円ですよね。
つまり、維持拘束性と処分可能性という観点から資本と利益を区別すると、資本に相当する部分は1,000万円となり、利益に相当する部分は1,500万円となるわけです。
又、300万円が過年度の留保利益(=利益剰余金)ではなく、資本金に組み入れられなかった資本準備金だとすれば、処分可能な利益は1,500万円ではなく、期末の純資産2,500万円から資本金1,000万円と資本準備金300万円を差し引いた1,200万円となります。
但し、実務においては、たとえ過年度の留保利益(=利益剰余金)であったとしても、資本金や資本準備金と同じように事業資金として利用されていることが普通なので、利益として処分することは簡単ではありません。
尚、このような考え方は、「資本と利益の区別の原則」の「特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」という部分と整合することになります。
ちなみに、資本剰余金とは、資本準備金のような資本取引によって生じた剰余金のことであり、利益剰余金とは、損益取引によって生じた剰余金のことです。
このように、資本と利益の境界は常に固定されているわけではなく、「どのような観点から区別するのか?」によって移動することになります。
次回は、「ROE(自己資本利益率)」についてお話ししたいと思います。
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