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今回は、「自転車操業の原因」について考えてみたいと思います。
なぜ、自転車操業の状態に陥ってしまうのか?
中小企業の経営者であるあなたは、「借入金を返済してしまうと、運転資金が用意できなくなってしまう……」という経験をしたことはないでしょうか?
ちなみに、運転資金というのは、企業が事業を継続するために必要となる立替金のようなものであり、売上債権+棚卸資産-仕入債務の算式によって金額を求めることができますが、人によっては「必要運転資金」と呼んだり、「運転資本」と呼んだりすることもあります。
一般的な事業では、仕入代金の支払いや経費の支払いが先に生じて、その後に売上代金の入金が行われることが多いため、なぜ、黒字倒産が起きるのか?(知っているつもり?キャッシュフロー経営!その8)でも説明したように、たとえ黒字であっても一時的に資金が足りなくなるようなことが生じます。
特に、企業が成長軌道に乗ったことで急激に売上高が増加し、これに伴って必要な運転資金の額も急激に増えているような場合には、自己資本だけで運転資金を用意するのはとても難しいです。
そこで、このような場合に借入れによって運転資金を調達すると、無事に売上代金が入金されたとしても、獲得した資金を借入金の返済に充てなければならなくなるので、事業を継続していくためには、再び借入れによって運転資金を調達しなければならなくなります。
つまり、借入れとその返済を繰り返すという自転車操業の状態に陥ってしまうわけです。
同じ自転車操業の状態に見えたとしても……
同じ自転車操業の状態でも、急激に売上高が増加したことで必要な運転資金を借入れによって調達しているような場合と、売上高は減少傾向にあるのに必要な運転資金を借入れによって調達しているような場合では、キャッシュフローの状態は大きく異なっています。
急激に売上高が増加したことで必要な運転資金を借入れによって調達しているような場合は、あくまでもキャッシュ・インとキャッシュ・アウトのタイミングのズレから一時的に手元資金が不足しているだけであって、資金的な裏付けのある利益*を確保できているのであれば、借入金の返済を考慮しても、いずれ自転車操業の状態から抜け出すことができます。
*キャッシュとして回収される利益のこと。
けれども、売上高は減少傾向にあるのに必要な運転資金を借入れによって調達しているような場合は、慢性的に不足している営業活動のための資金を借入金で補っている状態なので、自転車操業の状態から抜け出すことは非常に難しくなってきます。
但し、売上高は減少傾向にあるのに必要な運転資金を借入れによって調達しているような場合であっても、資金的な裏付けのある利益を十分に確保できているのであれば、返済原資に問題はありませんから、借入金の返済を考慮しても、自転車操業の状態から抜け出すことはできるでしょう。
尚、キャッシュフロー経営の観点からは、キャッシュの流れを追うことで「必要な運転資金を減らす」という方法が示されることがありますが、利益とキャッシュフローの切っても切れない関係?(知っているつもり?キャッシュフロー経営!その5)でも説明したように、中小企業が必要な運転資金を減らしていくことは簡単ではありません。
次回は、「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」について解説してみたいと思います。
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