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今回は、「管理会計の立場から見た品質問題」について解説してみたいと思います。
品質原価とは何か?
中小企業の経営者であるあなたは、これまでに品質原価がどれくらいになるのか算定してみたことはあるでしょうか?
ちなみに、品質原価とは(1)予防原価*1(2)評価原価*2(3)失敗原価*3の3つからなるコストのことであり、品質保証活動に要するコストのことを指します。
*1不良品の発生を事前に防止するための訓練などに要するコストのことです。
*2不良品を発見するために行われる検査などに要するコストのことです。
*3失敗原価は内部失敗原価と外部失敗原価からなり、内部失敗原価とは顧客に提供する前に発見された不良品の補修などに要するコストのことです。又、外部失敗原価とは顧客に提供した後で発見された不良品の交換などに要するコストのことです。
実は、(1)予防原価と(2)評価原価からなる品質適合原価と(3)失敗原価からなる品質不適合原価との間にはトレードオフの関係があるため、品質適合原価が大きく(小さく)なると不良品の発生が減って(増えて)、その分だけ品質不適合原価は小さく(大きく)なります。
そこで、このようなトレードオフの関係を利用することで、製品単位当たりの品質適合原価と製品単位当たりの品質不適合原価の合計が最小となる最適品質原価を求めることができます。
品質重視のはずだったのに……
このように、品質原価がどれくらいになるのかを算定することで、最適品質原価を求めることができますが、多くの日本企業では最適品質原価を求めるようなことはせず、ZD(Zero Defects=不良品ゼロ)を目指して、TQC(Total Quality Control=全社的品質管理)活動などに取り組んできました。
なぜなら、品質を軽視して顧客の信用を失ってしまうと、潜在顧客を失うなどの機会損失は莫大な金額になってしまい、逆に、頑張って品質水準を向上させることができれば、いずれ品質原価は低下するという考え方が支配的だったからです。
そのような理由から、日本においては、一定数の不良品の発生を前提とした最適品質原価という考え方は普及せず、「品質とコストをどのようにバランスさせるのか?」というような議論も起こりませんでした。
ところが、ここ数年、検査不正などの品質の信頼性に関わる不祥事が日本企業で頻発しており、これまで日本企業が築いてきた品質重視のイメージが崩れつつあります。
それぞれの不祥事の内容を見てみると、少しずつ事情は違っているようですが、私個人としては以下の2つの理由があると考えています。
1つめは、要求される性能が高くなり過ぎたことで、外部の者が品質基準を満たさない不良品なのかどうかを簡単には判断できなくなったことです。
このような状態だと、バレなければ大丈夫という心理が働きやすく、不正と同じように機会さえあれば品質を偽ることになります。
2つめは、グローバル化が進展して更に競争が激しくなったことで、日々の改善活動だけでコストを引き下げていくことが難しくなってきたことです。
そのため、きちんと利益を確保するためには、品質とコストをどのようにバランスさせるのかを予め検討しておく必要性が増していると考えられます。
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