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今回も、「消費者が相当と考える価値」について考えてみたいと思います。
「アンカリング効果」と呼ばれる認知バイアスが働くことで……
前回の自社の商品やサービスを高い価格で販売するには何をすれば良いのか?(中小企業だからこそできる価格戦略!その6)では、「消費者が相当と考える価値」の大きさは人によって違うことを説明しましたが、同一人物の場合なら「消費者が相当と考える価値」の大きさは同じままなのでしょうか?
例えば、高額な商品A、低額な商品B、両商品の中間の価格である商品Cの3つがあるとします。
この時に、先に高額な商品Aの販売価格を提示された後に商品Cの販売価格を提示される場合と、先に低額な商品Bの販売価格を提示された後に商品Cの販売価格を提示される場合で、消費者Xの商品Cに対する印象はどうなるでしょうか?
もし、消費者Xが相当と考える価値の評価が絶対的なものであるなら、商品の販売価格を提示する順番を変えたとしても、それぞれの商品に対する評価は変わらないはずですから、消費者Xの商品Cに対する印象は変わらないはずです。
しかし、行動経済学の研究によると、「アンカリング効果」と呼ばれる認知バイアスが働くことで、最初に見た価格によって消費者の評価が変わってしまうことが知られています。
つまり、先に高額な商品Aの販売価格を提示された後に商品Cの販売価格を提示されると消費者Xは商品Cを割安だと感じ、又、先に低額な商品Bの販売価格を提示された後に商品Cの販売価格を提示されると消費者Xは商品Cを割高だと感じるのです。
同じ3つの商品を比較する場合であっても……
このような現象が生じるのは、消費者が相当と考える価値を評価する際には、何かしら基準となるものと(無意識のうちに)比較しているからだと考えられています。
そうだとすると、さらに一歩進めて、比較対象となる「おとり」の商品やサービスを用意することができれば、あなたが消費者に選ばせたい商品やサービスを選択するように誘導できるはずです。
例えば、消費者Yが高機能だが高額の商品Dと低機能だが低額の商品Eのどちらを購入するべきか悩んでいるとします。
消費者Yに商品Dを選択させたいのであれば、商品Dには劣るが商品Eよりは高機能の商品Fをおとりとして、商品Dよりも高額で提示すればよいのです。
そうすれば、商品Eと商品Fの関係は商品Dと商品Eの関係と同じように「機能を優先するか?価格を優先するか?」という関係で判断が難しいのに対し、商品Dと商品Fの関係は「機能と価格のどちらも商品Dの方が優れている!」という関係で判断が容易であるため、消費者Yが商品Dを選択する確率は高まるはずです。
尚、行動経済学の研究によると、同じ3つの商品を比較する場合であっても、高機能・高価格の商品G、中機能・中価格の商品H、低機能・低価格の商品Iとして消費者に提示すると、「ゴルディロックス効果(=極端な選択は避けようとする心理効果)」が働くことで真ん中の商品Hが選択される可能性が高いことが分かっています。
このように商品やサービスの提示の仕方を工夫することによって、たとえ同一人物であっても消費者が相当と考える価値の大きさをある程度は変えられるのです。
次回は、「商品やサービスの利用者と代金を負担する者の関係が販売価格に与える影響」について解説したいと思います。
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