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今回は、「多角化」について解説してみたいと思います。
多角化とは何か?
中小企業の経営者であるあなたは、これまでに「多角化」しようと思ったことはあるでしょうか?
尚、多角化とは、これまでに進出したことがない新分野へ事業を拡張し、企業の多様性を高めようとする行動のことです。
事業転換における4つのパターン!では、中小企業の場合、必要となる経営資源の量が大幅に増えてしまう多角化よりも事業転換の方が選択しやすいという説明をしましたが、中小企業であっても使える経営資源(特にヒトとカネ)に余裕があるのであれば、多角化を選択する方が望ましい場合は十分に考えられます。
但し、事業転換と違い、多角化の場合には既存事業を継続することになるため、「どのような目的で多角化するのか?」によって、既存事業と新規事業の関係性が大きく違ってくることには留意する必要があります。
つまり、「範囲の経済*1やシナジー効果*2によるメリットを得たい!」という目的から多角化を行う場合と「できるだけリスクを分散させたい!」という目的から多角化を行う場合とでは、既存事業の経営資源を活用できるかどうかが違ってくるのです。
*1複数の事業を行うことで、それぞれ単独で事業を行うよりもコストが安くなる効果のこと。
*2経営資源を共有することで、「1+1=3」になるような相乗効果のこと。
ちなみに、範囲の経済が多角化のメリットをコスト面から説明しているのに対し、シナジー効果は同じ多角化のメリットを効果の面から説明していると考えることができます。
多角化を行うとしても……
範囲の経済やシナジー効果によるメリットを得ることを目的に多角化を行う場合、これらのメリットを得るためには、そもそも既存事業と関係がある事業を選択し、既存事業で獲得したノウハウなどの経営資源を活用できるようにする必要があります。
一方、リスク分散を目的に多角化を行う場合、既存事業の景気動向の変化による影響をできるだけ受けないようにするためには、なるべく既存事業とは関係がない事業を選択しなければなりませんから、既存事業で獲得したノウハウなどの経営資源を新規事業の経営資源として活用することは難しくなります。
しかも、リスク分散を目的に多角化を行う場合、新規事業に必要な経営資源をM&Aなどの手法によって新たに調達してくるとしても、これまで営んできた事業とあまり関係のない事業なので判断が難しく、同じ多角化であっても、中小企業にとってはハードルが高いといえます。
以上のようなことから、中小企業の場合、同じ多角化を行うとしても、範囲の経済やシナジー効果によるメリットを得ることを目的に多角化を行うべきであり、資金にかなりの余裕があるなどの特段の事情でもない限り、リスク分散を目的に多角化を行うのは避けるべきです。(中途半端な多角化をしてしまうと、かえってリスクを高めてしまうことにもなりかねません!)
それでもリスク分散を目的に多角化を行いたいというのであれば、新規事業が上手く行かなかった場合に撤退の判断を先延ばしにすることがないように、撤退の判断をするための基準を予め定めておくべきでしょう。
次回は、「ゾンビ企業」についてお話ししたいと思います。
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