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今回は、「決算書の主人公(会計主体論)」についてお話ししたいと思います。
誰の立場から決算書は作成されるべきか?
中小企業の経営者であるあなたは、これまでに「誰の立場から決算書は作成されるべきか?」考えてみたことはあるでしょうか?
もし、所有者である株主(つまり大株主でもあるあなた自身)の立場から決算書は作成されるべきだと考えるのなら、資産は株主に帰属する財産であり、負債は株主に帰属する債務であり、純資産(資本)は株主に帰属する正味財産ということになりますから、決算書は株主に帰属する正味財産がどれくらい増えたのか、あるいは、どれくらい減ったのかを表すことを中心に作成されなければならないということになるはずです。
一方、もし、企業という社会的存在による独自の立場から決算書は作成されるべきだと考えるのなら、資産は企業に帰属する財産ということになりますが、負債は企業に帰属する債務というよりも、純資産(資本)と同じように企業の資本源泉の一部であると解釈できますから、決算書は企業という社会的存在が生み出した付加価値がどれくらいあったのかを企業の利害関係者に知らせるために作成されなければならないということになるはずです。
尚、実際には2つの考え方が併存した状態で決算書は作成されています。
資本助成の目的で国から国庫補助金を受けたような場合……
例えば、有形固定資産の購入や製作に充当するなどの資本助成の目的で国から国庫補助金を受けたような場合を考えてみてください。(赤字補填のための補助金や助成金を受け取った場合の話ではありません!)
この場合、国庫補助金の処理について、簿記会計では(1)収益として処理する、(2)資本剰余金として処理する、(3)負債として処理する、という3つのパターンが考えられます。
先ほど見たように、決算書は所有者である株主の立場で作成されるべきだと考えるのならば、国庫補助金は出資の目的で拠出されたものではない(株主になろうとして支払われたものではない)ので、収益として処理するということになるはずです。
しかし、収益として処理すると課税されてしまうので、最悪の場合、資本助成の目的を達成できないという問題が生じます。
そこで、一時的に負債(繰延収益)として処理し、その後、数期間に分けて収益に振り替えるという方法(イメージとしては減価償却と貸借が逆パターンの処理です!)が会計の側から提案されています。
一方、決算書は企業という社会的存在による独自の立場で作成されるべきだと考えるのならば、国庫補助金は出資の目的で拠出されたものではなくても、資本助成の目的で支払われたものなので、資本剰余金として処理するということになるはずです。
ちなみに、実務上、国庫補助金は収益として処理することになっており、課税されるという問題については、税務上、圧縮記帳*という処理を認めることで対処しています。
*有形固定資産の取得価額を減額することで課税の繰り延べを行う税務上の処理のことであり、直接減額方式と積立金方式があります。
次回は、資産や負債の「流動・固定の分類」について解説してみたいと思います。
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