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今回は、採算ラインを正確に把握することの重要性について考えみたいと思います。
外部に仕事を依頼するとしたら……
もし、中小企業の経営者であるあなたが外部に仕事を依頼するとしたら、「採算ラインを正確に把握している会社」と「ドンブリ勘定で自社が儲かっているのかどうかもよく分かっていないような会社」のどちらに仕事を依頼したいと思うでしょうか?(両社とも仕事を遂行する能力は十分にあることが前提です!)
それは、ドンブリ勘定で自社が儲かっているのかどうかもよく分かっていないような会社の方ですよね。
なぜなら、採算ラインを正確に把握している会社が相手だと、受注価格の交渉が大変になるのは目に見えていますし、低い価格を提示すれば引き受けてもらえない可能性も高くなるからです。
ちなみに、ここでいう採算ラインとは、CVP分析に見られるような損益分岐点を指しているわけではなく、企業が置かれている状況によって変化してしまう判断基準のことです。
尚、判断基準については、限界利益がプラスなら、どんな場合でも受注するべきなのか?(管理会計のワナ!その5)で、企業が置かれている状況によって変わってしまうことを設例を使って解説していますから、興味があるようならご覧ください。(あくまでも解説しているのは一例だけですが……)
親事業者に侮られないためにも……
下請けであるかどうかは別としても、仕事を引き受けるべきかどうかを判断する場面で最も避けるべきなのは、採算ラインを正確に把握することができないために、不利な取引であっても安易に引き受けてしまうことです。
もちろん、親事業者と下請け企業では力関係に差があるため、不利な条件の取引であることが分かっていても、仕方なく仕事を引き受けなければならないようなことはあるでしょうし、採算ラインを割り込んでいる不利な条件の取引であっても、企業努力をすることで利益が出るようになることもあるでしょう。
しかし、それらは全く次元の違う話ですから、下請け企業が採算ラインを正確に把握しなくてもよいという理由にはなりません。
むしろ、親事業者と下請け企業の力関係をなるべく対等なものに近づけるためにも、両社の間にある「情報格差」を埋めるように努力する必要があります。(冒頭にした質問で「情報格差」が両社の力関係にも影響を与えることには気がつきましたよね?)
そこで、管理会計を導入することで、採算ラインを正確に把握できるような体制を整備するのです。
尚、管理会計というのは、決算書を作成するために行われている財務会計や、税務申告書を作成するために行われている税務会計のことではなく、経営者や管理者が意思決定をするために必要な情報を提供する会計のことです。
そして、採算ラインを正確に把握することができるようになれば、親事業者も採算ラインを大きく割り込んでいるような理不尽な仕事の依頼をすることが難しくなるでしょうし、こちらも理不尽な仕事の依頼に対して的確な対応ができるようになるでしょう。
少なくとも、「あそこはいつもドンブリ勘定だから……」と親事業者に侮られることはなくなるはずです。
次回は、下請けの仕事だけに専念しているような場合の下請けからの抜け出し方について解説したいと思います。
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