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今回は、「特定調停」について考えてみたいと思います。
特定調停とは何か?
事業再生を行うには、実際にはリスケジュールだけでは難しいと判断されることも多いですが、中小企業の場合、金融機関が債権放棄(債務免除)してくれることはまずないが……(中小企業経営者のための事業再生!その8)でも説明したように、私的整理の方法では、金融機関が債務免除などに応じてくれることはほとんどありません。
けれども、「会社更生法」や「民事再生法」による法的整理の方法によった場合、取引先に経営状態が悪化していることを知られてしまうので、信用不安が高まることにより、事業再生そのものが困難になってしまう危険があります。
そこで、そのような状態を回避するための方法として「特定調停」が考えられます。
特定調停とは、特定債務者(=債務の返済ができなくなる恐れのある債務者)の経済的な再生を図るため、支払条件の変更などの利害調整を行うことを目的とするものをいいますが、他の私的整理のように当事者だけで交渉するのではなく、裁判所や専門的知識を有する民事調停委員(弁護士や公認会計士などの専門家が就任することが多いようです)が関与する点に特徴があります。
それ故に、債権者から手続きが公正に行われるだろうという心証を得やすく、他の私的整理によった場合と比べても、債権者の合意を得やすいはずです。
尚、特定調停は「特定債務等の調整を促進のための特定調停に関する法律(以下、特定調停法と呼びます)」によって行われ、特定調停法や特定調停手続規則に定めがないものについては、民事調停法及び民事調停規則の規定に従うことになります。
特定調停のメリット
先ほども少し説明したように、「会社更生法」や「民事再生法」による法的整理の方法によった場合、全ての債権者が対象となってしまいますが、特定調停法による特定調停によった場合、特定の債権者のみを対象にすることが可能になります。
そのため、金融機関だけを対象とし、それ以外の一般の取引先を対象外にするといったような柔軟な対応もでき、一般の取引先に知られないように債務整理を行うようなことも可能になります。
又、他の私的整理によった場合には、債権者が執行手続を強行することを止めさせることは難しいのですが、特定調停によった場合には、一定のケースに該当すれば、申立てにより、特定調停が終了するまでの間は執行手続を強行することを止めさせることができます。
更に、税務上、一定の条件を満たすことで、債権者側は債権放棄した額を損金として処理することが認められ、債務者側も期限切れの欠損金を利用すること等が認められます。
特定調停が使えない場合
特定調停は対象となる金融機関とそれぞれ個別に合意を取り付けなければ成立しません。
ですから、ほとんどの金融機関が合意してくれる場合であっても、一部の金融機関が反対しているような場合には、特定調停により解決することは難しくなります。
又、特定調停による調停内容は公平かつ妥当で経済合理性を有するものであることが必要ですから、いくら反対されるからといって、反対している金融機関との間で有利な条件で合意を取り付けるようなことも認められません。
次回は、「会社更生法」や「民事再生法」による法的整理、「清算型の倒産」などについてお話ししたいと思います。
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