事業再生をする際に、任意売却を選択するなら……(中小企業経営者のための事業再生!その16)

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今回は、「任意売却」について考えてみたいと思います。

任意売却とは何か?

前回のDPO(ディスカウント・ペイオフ)により不良債権を処理する?(中小企業経営者のための事業再生!その15)でも説明したように、「プロパー融資(=信用保証協会の保証が付いていない融資のこと)」を受けている場合に、計画通りに再建が進んでいないと、担保が設定されている不動産等の競売が行われる可能性が高まります。

不動産等の競売が行われる可能性が……

けれども、一般的には、競売をすると市場価格よりも大幅に安い価格で売却されることが多いため、債権者である銀行もあまり行いたくないというのが本音でしょう。

そこで、このような場合に不動産の「任意売却」という方法が採用されることがあります。

任意売却というのは、債権者である銀行に不動産の抵当権を外してもらい、不動産会社などの特定の第三者に不動産を売却するという方法のことです。

任意売却であれば、競売と比べて、高い価格で不動産を売却できることが多いので、債権者である銀行にとっても、債権回収できる金額が増える可能性が高くなり、又、債務者である会社や経営者にとっても、競売と違い、売却相手に自分たちの要望を聞いてもらえる可能性があるので、債権者と債務者の双方にメリットがある方法だといえます。

それに、任意売却によって会社の不要な資産を売却すれば、売却代金を借入金の返済に回せるだけでなく、会社の資産や負債をオフバランスすることにもなるので、会社の財務指標が改善します。

任意売却によって多額の売却益が生じると……

任意売却される不動産の売却価格が取得価額よりも大幅に高いような場合には、任意売却を行うことにより多額の売却益が生じます。

売却価格が高いとそれはそれで……

そのため、会社所有の不動産を任意売却して多額の売却益が生じた場合には、売却益は益金として処理されるため、「繰越欠損金」を使うなどして税金の対策をしなければ、多額の法人税の支払いが必要になる可能性があります。

一方、経営者所有の不動産を任意売却して多額の売却益が生じた場合には、原則として、そのような譲渡所得に対する所得税の支払いが必要になりますが、任意売却をすることが「保証債務の特例」に該当するならば課税はされません。(但し、特例を受けるための手続きは必要です。)

セール・アンド・リースバックを利用することも……

債務者である会社や経営者が主導で任意売却を行う場合、経営再建に理解のある売却相手を見つけ出すことができるなら、一定の使用料を支払うことで、その後も売却した不動産を引き続き使用することを認めてもらえる可能性があります。

つまり、売却相手が「セール・アンド・リースバック」の申し出に応じてくれるのであれば、経営再建に不可欠な会社の店舗や工場などの不動産を売却しても、使用料を払い続ける限り、その後も使用することが可能になりますし、経営者の自宅を売却しても、使用料を払い続ける限り、経営者が家族と自宅に住み続けることも可能になります。

セール・アンド・リースバックのイメージ

但し、任意売却の一環としてセール・アンド・リースバックを行う場合には、あくまでも債権者である銀行の了解がなければ実行することはできません(任意売却によって借入金の全額を返済できない場合であっても、債権者の銀行に不動産の抵当権を外してもらわなければなりません……)ので、債権者である銀行を説得する必要があります

次回は、「特定調停」についてお話ししたいと思います。

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