将来、銀行の貸倒見積高の算定方法が変わったら?(地方銀行は大丈夫なのか?その7)

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今回は、「銀行の与信関係費用」について考えてみたいと思います。

実は、あなたが経営する会社でも……

中小企業の経営者であるあなたは、銀行の与信関係費用というのが何を指しているのか分かるでしょうか?

銀行の与信関係費用?

銀行の与信関係費用とは、要は銀行が貸倒引当金の計上を行う際の繰入費用のことですが、実は、銀行だけでなく、あなたが経営する会社でも、会計上は回収不能と見込まれる債権の金額を貸倒引当金として計上しなければならないことに違いはありません。

ちなみに、あなたが経営する会社で貸倒引当金の繰入額があまり問題にならないのは、顧問税理士が、税務上損金算入することが認められる範囲内できちんと貸倒引当金の繰入額を計上しているからです。

つまり、税務上は貸倒引当金の繰入額が過大である場合問題になりますが、貸倒引当金の繰入額が不足している場合については特に問題にされないのです。

しかし、地方銀行などの銀行は、公認会計士や監査法人による会計監査を受けなければならないので、貸倒引当金の繰入額が不足していると、税務上は問題がなくても、会計上は問題になり、公認会計士や監査法人から指摘を受けることになります。

しかも、税務上損金算入することが認められる範囲を超えて貸倒引当金の繰入額を計上しなければならない場合には有税処理をする必要があるのです。

「会計」と「税務」では貸倒引当金の計上要件が異なります!

形式基準から実質基準へ

2018年度末時点では、銀行も、一般の企業も、与信関係費用の会計上の処理の仕方に大きな違いはありません。

両者の違いは、銀行の債務者区分が5区分(実質的には6区分)であるのに対し、一般の企業の債務者区分は3区分であることぐらいで、貸倒見積高の算定方法については、一般の企業が使う貸倒実績率法*1、財務内容評価法(その1)*2(その2)*3、キャッシュ・フロー見積法*4に相当する方法を銀行も使うことになります。

*1債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する方法のこと。

*2債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残高について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法のこと。

*3債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残高を貸倒見積高とする方法のこと。

*4債権の元本及び利息について、元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり、当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法のこと。

一般の企業と銀行の債権者区分と貸倒見積高の算定方法の比較

けれども、2019年5月8日の日本経済新聞を見ると、金融庁は銀行の与信関係費用の会計上の処理の仕方について、将来、先ほど説明した形式基準による方法から、企業の将来性などを考慮した実質基準による方法へ変更しようと考えているようです。

そうなると、実抜計画の要件を満たした経営改善計画を立案させて「正常先」にしているような貸付先については、将来、銀行の貸倒見積高の算定方法が変更されると、多額の貸倒引当金の繰入をしなければならない可能性が高まります。

もし、あなたが経営する会社がこのようなケースに該当するなら、銀行から見捨てられないように、今から対策をしておいた方が無難かもしれません……

次回は、「銀行員の定期異動」についてお話ししたいと思います。

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