募集株式の発行等による資金調達(中小企業経営者のための会社法入門!その6)

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今回は、「募集株式の発行等」について解説してみたいと思います。

募集株式の発行等とは?

これまで、「株式会社」は大規模経営に向いていると説明してきましたが、そのような大規模経営を可能にするためには、多額の資金を多様な手段によって調達できるような仕組みが必要になります。

多額の資金を多様な手段によって調達できるような仕組みが必要……

そこで、会社法は「株式会社」に対して、他の会社にも認められている「融資(銀行からの借入れ)」や「社債の発行」といった資金調達の方法だけでなく、「募集株式の発行等」による資金調達の方法を認めました。

尚、募集株式の発行等には、会社の成立後に新たに発行する株式を引き受ける者を募集する方法(新株発行による方法)会社が処分しようとしている自己株式を引き受ける者を募集する方法(自己株式による方法)があります。

既存株主の利益VS会社の資金調達の便宜

会社が資金調達を目的として募集株式の発行等を行うには、既存株主の持株数に応じて株式を割当てる「株主割当」株式を割当てる対象をあらかじめ定めない「公募」株主であるか否かに関わらず、特定の第三者に株式を割当てる「第三者割当」の3つの方法があります。

この内、株主割当による方法を選択するならば、(株主全員が引き受けることを前提にすると)株主間の持株割合は変化しないので、それぞれの株主の会社に対する影響力は募集株式の発行等の前と比べて変わりません。

又、株主間の持株割合が変化しないので、株式の払込金額に関わらず、募集株式の発行等によって生じる株式一株当たりの経済的価値の変動の影響も受けません。

株主割当によるケース

けれども、公募や第三者割当による方法を選択するならば、株主間の持株割合は変化することになるので、それぞれの株主の会社に対する影響力は募集株式の発行等の前と比べて変わってしまいます。

又、株主間の持株割合が変化するので、株式の払込金額の多寡により、募集株式の発行等によって生じる株式一株当たりの経済的価値の変動の影響を受けることになります。

第三者割当によるケース

そのため、既存株主の立場からは、会社が募集事項の決定をその時々の経営判断によって自由に行えるとすれば、既存株主の利益を守れない危険があります。しかし、会社の資金調達を重視するならば、募集事項の決定をその時々の経営判断によって自由に行えるようにしておく必要があるでしょう。

そこで、会社法は、非公開会社(=株式の譲渡について会社の承認を要する旨の定款の定めを設けている株式会社)なのか、それとも、公開会社(=株式の譲渡について会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社)なのかによって、取り扱いを分けることにしました。

つまり、非公開会社では既存株主の利益を重視して、原則として、株主総会の特別決議が必要になります。

尚、株主総会の特別決議により、募集事項の決定を1年間に限って取締役会へ委任することもでき、又、株主割当については、定款の定めがあれば取締役会の決議で行うことができます。

株主割当については、定款の定めがあれば取締役会の決議で行うことができます。

一方、公開会社では会社の資金調達の便宜を重視して、原則として、取締役会の決議で行えます。

但し、公開会社であっても、募集株式の発行等によって生じる株式一株当たりの経済的価値の変動の影響は無視できないため、第三者に対して有利発行をする場合には、原則として、株主総会の特別決議が必要となります。

次回は、「株主の権利と株式の関係」についてお話ししたいと思います。

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