法人契約の生命保険を使った節税方法の実態は……

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今回は、法人契約の生命保険を使った節税方法の是非について解説したいと思います。

法人契約の生命保険を使った節税方法とは?

少し前になりますが、2019年2月14日の日本経済新聞に、国税庁が法人契約の生命保険に対する税務上の取り扱いを見直すことを受けて、生命保険各社が節税目的で加入が増えている生命保険の販売を一時取りやめることを決めたという内容の記事が載っていました。

国税庁が問題視している生命保険というのは、保険料が全額損金算入でき、かつ、保険の解約返戻率が高い(50%以上)というタイプのものであり、まずは、保険料を支払うことによって課税額を減らし、その後、保険の解約返戻率が最も高くなるタイミングで解約をすることで、支払った保険料のかなりの割合を取り戻せるというものです。

例えるなら、資金を保険会社に一時的に移すことで課税されるのを回避し、その後、保険会社にプールしておいた資金を回収するといった感じです。

経営者であるあなたも法人契約の生命保険を使った節税方法を提案されたことはないでしょうか?

国税庁が税務上の取り扱いを見直そうとするぐらいだから……

法人契約の生命保険を使った節税方法は、国税庁が税務上の取り扱いを見直しているぐらいなので、節税効果がとても高い印象があるのですが、よく考えると問題が二つあります。

一つ目の問題は、この方法ではどうやっても保険の解約返戻金に課税されてしまうので、「課税の先送り」をしているに過ぎないということです。

この対策として、保険の解約のタイミングに合わせて役員退職金などの支払いを行い、保険の解約返戻金による益金と役員退職金などによる損金を相殺することで、保険の解約返戻金に課税されるのを回避できるという説明がよくされます。

けれども、このやり方で保険の解約返戻金に課税されるのを回避できません。

なぜなら、もし、保険の解約返戻金による益金が生じなければ、役員退職金などによる損金は売上高などの他の益金と相殺できたはずですから、解約返戻金の分だけ所得金額は増えていると考えるべきだからです。

解約返戻金の説明図①

そして、保険を解約した期が赤字になったとしても、保険の解約返戻金による益金と相殺した分は繰越欠損金として次年度以降の節税に利用することができたはずなので、その後10年以上赤字が続くというような事情がなければ、やっぱり解約返戻金の分だけ所得金額は増えていると考えることができます。

解約返戻金の説明図②

二つ目の問題は、この方法では資金を全額プールできておらず、実際にはキャッシュ・アウトを伴った節税をしているに過ぎないということです。

法人契約の生命保険を使った節税方法というのは、保険の解約時に保険会社からの解約返戻金があるので、保険会社に資金を一時的に預けているように錯覚してしまうのですが、解約返戻率が100%でなければ、100%を下回った分は当然戻ってきません。

そして、この戻ってこない分は保険会社に実質的な支払いをしていることになるので、キャッシュ・アウトを伴った節税をしているのと同じになります。

そのため、経営者に万が一のことがあった場合に備えて生命保険に加入しているのであれば何ら問題はないのですが、そうではなく、節税することだけが加入の目的であったなら、法人契約の生命保険を使った節税方法というのは、ただムダお金を使って節税しているのと何ら変わりはないということになるでしょう。

国税庁が本当に問題視しているのは……

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