DDS(デット・デット・スワップ)という選択肢もありますが……(中小企業経営者のための事業再生!その9)

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今回は、「DDS(デット・デット・スワップ)」について考えてみたいと思います。

DDS(デット・デット・スワップ)とは?

DDS(デット・デット・スワップ)とは、銀行などの金融機関が有している債権を他の一般債権よりも劣後する(=返済順位が低い)債権に交換することです。

前回の中小企業の場合、金融機関が債権放棄(債務免除)してくれることはまずないが……(中小企業経営者のための事業再生!その8)で説明した債権放棄(債務免除)を行うと、債務者の財務内容を改善させることはできますが、債権そのものを消滅させてしまうため、金融機関にとってはハードルが高すぎるという問題がありました。

そこで、債務者が返済義務を負うという状態は変えずに、債務者の財務内容を改善させる方法として、DDSを行うという解決策が考えられます。

但し、DDSを行って債務者の財務内容を改善させるというのは、金融機関が自己査定*を実施する場面に限った話であり、実際に債務者の財務内容が改善するわけではありません。

*自己査定とは、銀行などの金融機関が融資債権の状況を定期的に評価することです。

実際に債務者の財務内容が改善するわけではない……

つまり、DDSを行うことで、金融機関が自己査定を行う際に、該当する債権(債務者である企業の側から見ると債務)を「資本性借入金」として扱い、更に、一定の条件を満たせば、これを資本とみなして財務内容を評価できるということです。

DDS(デット・デット・スワップ)のメリット!

上述のごとく、DDSの場合には、債権放棄と違って実際に債権そのものを消滅させるわけではありませんから、債権者である金融機関にとっては受け入れやすく、又、(金融検査マニュアルが廃止されるので、今後の扱いが変更される可能性がありますが……)自己査定において債務者区分のランクダウンを回避し、貸倒引当金の積み増しによる金融機関の業績の悪化を回避することが可能になります。

一方、債務者である企業の側も、債権放棄と違って「債務免除益」が生じないので、「繰越欠損金」が使えないような場合であっても、多額の税金の支払いが必要となるというような問題が生じず、又、債務の支払い期限が事実上延長されることになるので、リスケジュールが行われた場合と同じように資金繰りが安定することになります。

DDS(デット・デット・スワップ)のイメージ

資本とみなされるための要件

ただ、DDSを行うことにより、資本性借入金として扱われた債権(債務者である企業の側から見ると債務)の全てが資本とみなされるわけではありません。

資本とみなされるには、

・償還条件:具体的には償還期間が5年を超えるものであり、原則として期限一括償還であること

・金利設定:原則として業績連動型であること 但し、株主管理コストに準じた事務コスト相当の金利であれば差し支えありません

・劣後性:原則として法的破綻時の劣後性が確保されていること 但し、担保解除が事実上困難である場合には、他の債権に先んじて回収しない仕組みが備わっていれば差し支えありません

といった要件を満たす必要があります。又、(金融検査マニュアルが廃止されるので、今後の扱いが変更される可能性がありますが……)残存期間が5年未満となったものについては、1 年ごとに20%ずつ資本とみなす部分を逓減させなければなりません。

資本逓減ルールのイメージ

次回は、「DES(デット・エクイティ・スワップ)」についてお話ししたいと思います。

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