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今回は、減価償却の効果について考えてみたいと思います。
「自己金融効果」とは?
中小企業の経営者であるあなたは、銀行から設備資金の融資を受ける際などに、減価償却の「自己金融効果(ローマン・ルフチ効果と呼ばれることもあります!)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「自己金融効果」とは、そもそも減価償却費は支出を伴わない費用なので、減価償却費の額に相当する資金が企業内に留保されるという効果のことであり、それにより固定資産の耐用年数期間に渡って再取得に必要な資金が創出されるという効果のことです。
しかし、勘違いしてはならないのは、この“減価償却費の額に相当する資金”というのは、減価償却という行為そのものによって獲得されているわけではないということです。
あくまでも、この“減価償却費の額に相当する資金”というのは、減価償却費が計上された期の売上によって獲得された貨幣性資産(=現預金や売掛金などのこと)により企業内に留保されるものですから、減価償却費よりも当期純損失(赤字)の額の方が多いような場合、収入よりも減価償却費の方が多い部分については「自己金融効果」が生じないことになります。(下図参照)
企業内に留保されると説明されても……
それに、たとえ減価償却費よりも多額な当期純損失(赤字)が計上されていなかったとしても、「自己金融効果」によって獲得された資金を銀行などに預けておくなどしていないと、固定資産の耐用年数到来後に再投資しようと思っても、すぐに再投資に必要な資金を準備することはできません。
つまり、「自己金融効果」は売上によって獲得した資金を事業資金として使わずに積み立てておくことを暗黙の前提にしているのです。
けれども、あなたもご存じのように売上によって獲得された資金はすぐに事業資金として使われるのが普通でしょうから、直ちに再投資のための資金を用意することは難しいはずです。
ちなみに、この「自己金融効果」を前提にしている減価償却方法として「償却基金法」と呼ばれるものがあります。(但し、税法上は認められていませんので注意が必要です。)
償却基金法というのは、毎期一定額の資金を償却資金として企業外部に投資し、更にそれから得られる利息を償却基金に組み入れ、それらと同額の減価償却費を計上するという方法のことです。
尚、この減価償却方法も定額法と定率法、実は両方とも……(あなたの減価償却は間違っている?その3)で説明したように、毎期の費用の額を平準化することを意図した方法である点では定額法や定率法と共通します。
「自己金融効果」をよく考えてみると……
以上、ここまで説明してみて気がつかれたかもしれませんが、実をいうと「自己金融効果」と同じような効果は、棚卸資産などの他の費用性資産*についても生じています。
*費用性資産とは、将来費用となるべき属性を有する資産のことです。
しかし、わざわざ固定資産だけ「自己金融効果」という形で説明がされているのは、固定資産は棚卸資産などと比べて、支出してから費用になるまでの期間がとても長いからです。
そう考えると、「自己金融効果」とは特に意識するようなものではないのかもしれませんね……
次回は、非減価償却資産について解説したいと思います。
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