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今回は、キャッシュフロー情報だけを重視する場合の前受金の危険性について考えてみたいと思います。
なぜ、“てるみくらぶ”や“はれのひ”の事件は起こったのか?
TVや新聞で報道されていたことぐらいしか知りませんが、それでも、格安旅行会社“てるみくらぶ”や、振袖の販売やレンタル事業などを営んでいた“はれのひ”が起こした事件のきっかけについてはおおよその見当がつきます。
それは、「前受金ビジネス」の特性からくる危険です。
前受金ビジネスとは、顧客に財やサービスなどの提供をする前に、代金の全部又は一部を事前に手付金として受取る事業形態のことをいいますが、本来ならビジネスとしてはとても成立しないような不採算の事業であっても、そのまま事業を続けられるという危険が潜んでいます。
なぜなら、事業を開始する時は支出が先行するとしても、その後は、仕入や経費の代金支払いによるキャッシュ・アウトよりも、前受金のキャッシュ・インの方が先行するために、利益が出ない事業であっても資金繰りが何とかなってしまうからです。
逆の説明をすれば、前受金ビジネスをしているにもかかわらず、資金繰りが厳しいようなら、そのビジネスは既に破綻しています。
まさに、格安旅行会社“てるみくらぶ”や、振袖の販売やレンタル事業などを営んでいた“はれのひ”が起こした事件の場合がそうでした。
意外に怖い、前受金の存在……
実は、前受金というのは、会計的には借入金などと同じ「負債」なのですが、売上による収入と同じようにキャッシュ・インをもたらすものなので、キャッシュフロー情報ばかり見ていると、あまり警戒することがありません。
けれども、売上による収入と違って、前受金の場合には、代金を受け取った分の財やサービスなどを顧客に提供する義務が生じますから、万が一、財やサービスなどを提供することができなければ、顧客に代金を返済しなければなりません。
つまり、前受金は顧客からキャッシュをただ預かっている状態のものですから、顧客から借入れをして手元のキャッシュを増やしているのとそんなに変わらないのです。
しかも、手元のキャッシュを見ただけでは儲けているかどうかは分かりませんから、利益が出ていないのにもかかわらず、資金繰りが何とかなるからといってズルズルと事業を続けていると、販売の増加が止まった途端に資金繰りがつかなくなり、慌てて金策に走ることになります。
しかし、この時には破綻しているのと同じような状態ですから、これを正攻法で立て直すことは難しく、多くの人が違法な手段に手を染めてしまうのです。
このような事態になることを防ぐには、キャッシュフロー情報だけを重視するのではなく、利益情報についても同じように重視しなければなりません。
尚、すごく極端な設定ですが、このことに関連する超簡単な設例をキャッシュフロー情報さえあれば、経営判断を誤ることはないのか?(知っているつもり?キャッシュフロー経営!その3)で紹介していますので、興味のある方は参照ください。
次回は、企業経営における流動性についてお話ししたいと思います。
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