この度は、白石茂義公認会計士事務所のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
このブログ記事は、2022年10月11日に更新しました。
今回も、危険な兆候をつかんだ時の対応などについて説明したいと思います。
債権回収、どうすれば……
取引先の危険な兆候をつかんだ時の与信管理における最も望ましい対応は、徐々に取引を縮小していき、問題が表面化して不良債権化する前に撤退する(=取引をやめる)ことですが、様々な理由により信用不安が起きるまでに撤退ができなかった場合はどうすれば良いのでしょうか?
前回の与信管理、信用不安が起きてからでは……(中小企業こそ与信管理が大事!その15)では「相殺」と「廻り手形にしてもらう方法」について紹介しましたが、これらの方法は信用不安が起きた後でも債権回収が期待できる反面、使える場面はかなり限定されるという問題があります。
つまり、相殺であれば、同じ取引先との間に相殺適状(=相殺できる状態)の債権と債務が存在しなければ使えない方法ですし、廻り手形にしてもらう方法であれば、第三者が振り出した手形を取引先が保有していなければそもそも使えないことになります。
そこで、今回はこれらの方法よりも汎用性がある方法として、「債権譲渡」という方法を紹介したいと思います。
債権譲渡という方法!
債権譲渡とは、取引先が有している売掛金などの債権を自社に譲渡してもらうことです。
債権譲渡を使えるならば、既に担保に供する資産を取引先が持っていないような場合であっても、債権保全できる余地はあります。
但し、売掛金などの債権は二重譲渡されることで、同一の債権を巡って複数の債権者が競合する可能性がありますから、そのような場合には、一番早く対抗要件(特に、第三者*に対抗するための要件)を成立させた者が基本的には勝つことになります。
そのため、債権譲渡は信用不安が起きてしまってから行っていたのでは遅すぎであり、その前に対策をしておく必要があります。
尚、債権譲受人Bが債務者Cに対抗するためには、
・債権譲渡人Aが債務者Cに通知する
・債務者Cが債権譲渡人Aないし債権譲受人Bに対して承諾する
のどちらかの要件を満たす必要があります。
そして、債権譲受人Bが第三者*に対抗するためには、
・債権譲渡人Aが債務者Cに内容証明郵便により通知する(確定日付は通知の到達日)
・債務者Cが債権譲渡人Aないし債権譲受人Bに対して公正証書により承諾する(確定日付は承諾の日付)
のどちらかの要件を満たすか、債権譲渡を登記する必要があります。
*この場合の第三者とは、二重譲渡がされた場合における、債権譲受人B以外の債権譲受人のことを指します。
ただ、債権譲渡人Aと債務者Cとの間で「相殺」を使える状態にある場合、譲渡してもらうはずの債権がなくなってしまう可能性があるので注意が必要です。
尚、2020年改正民法が適用される前には、債務者を保護するために「債権譲渡禁止の特約」が契約に盛り込まれている場合には、債権譲渡は無効とされていましたが、民法が改正されたことにより、債権譲渡禁止の特約がある場合であっても、債権譲渡は有効にできることになりました。(改正民法466条2項)
次回も、危険な兆候をつかんだ時の対応などについてお話ししたいと思います。
白石茂義公認会計士事務所では、士業コンシェルジュというコンセプトのもと、特に、愛媛県松山市、今治市、新居浜市、西条市の経営者の皆様からのお問い合わせをお待ちしております。
必要の際には、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。