決算書だけで、企業価値を正確に評価することはできるのか?(中小企業経営者のための決算書入門!その9)

この度は、白石茂義公認会計士事務所のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。

このブログ記事は、2019年2月6日に改題・更新しました。

今回も、前回に引き続き「決算書を利用できる限界」についてお話ししたいと思います。

自社の企業価値はどれくらいなのか?

中小企業の経営者であるあなたは、「自社の企業価値はどれくらいなのか?」と思ったことはないでしょうか?

自社の企業価値はどれくらいなのか?

近頃は、中小企業であってもM&Aが頻繁に行われていますから、会社のオーナーでもあるあなたが自社の企業価値を気にするのは当然のことだと思います。

そこで、自社の企業価値がどれくらいなのかを知るために決算書を見てみようということになるわけですが、残念ながら、ただ決算書を眺めているだけでは、企業価値を正確に評価することはできません……

企業価値を評価する3種類の方法

企業価値を評価する方法には、大別して、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3種類があります。

インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3種類があります。

インカム・アプローチというのは期待利益や将来キャッシュフローなどを使って企業価値を評価する方法であり、これら方法の内のDCF法(Discounted Cash Flow法)が現在では主流になっています。

マーケット・アプローチというのは、市場の株価などを使って企業価値を評価する方法ですが、中小企業の場合には、上場している同業他社や類似取引事例などと比較することで相対的に企業価値を評価することになります。

ネットアセット・アプローチというのは、企業の純資産を基準に企業価値を評価する方法です。決算書からダイレクトに企業価値を評価するなら、これらの方法の内の簿価純資産法によることになりますが、資産や負債が時価評価されていないため、実務で採用されることはまずありません。

尚、3種類の方法には、それぞれ長所と短所があるので、どれか一つの方法だけで企業価値を算出するのではなく、複数の方法を併用して行うことで、それぞれの評価結果を比較・検討しながら最終的に総合評価することが一般的に行われています。

こんな回りくどい説明をしなくても……

ここまで、企業価値を評価する方法の基本について説明してきましたが、こんな回りくどい説明をしなくても、経営者であるあなたであれば、決算書だけでは企業価値を正しく評価できないことは、何となく感覚的に分かるのではないでしょうか?

決算書だけでは企業価値を正しく評価できないような……

例えば、現実の企業経営では、

  • 有能な人材を獲得できている
  • 優良な取引先を多く抱えている
  • 企業のブランドイメージが高い

といったようなものが、経営上の重要な戦略的資産となりますが、これらは現行の財務会計の資産としての計上要件を満たしていないので、貸借対照表の資産の部に載ることはありません。

それに、企業価値というのは将来に対する期待を含めて算定されるものですから、過去の一時点の財政状態や過去の一定期間の経営成績などを表している決算書だけで評価をするには限界があります。

ですから、決算書以外の情報も考慮しながら企業価値を評価することになるのです。

次回は、「貸借対照表と損益計算書の関係」について解説してみたいと思います。

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