この度は、白石茂義公認会計士事務所のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
このブログ記事は、2019年5月6日に改題・更新しました。
今回は、「担保や保証の限界」について考えてみたいと思います。
金融庁でなくとも……
中小企業の経営者であるあなたは、銀行から担保や保証を求められて困った経験はないでしょうか?
金融庁は地方銀行などに対して、「担保や保証に依存した融資」から「事業性評価による融資」へと転換するよう求めていますが、未だに形式的な対応にとどまっている銀行も少なくありません。
けれども、昨今の日本における産業構造の変化を考慮すれば、金融庁でなくとも「担保や保証に依存した融資」は限界に近づきつつあると思わざるを得ない状況になっています。
担保や保証に依存できない理由
1980年代頃までの日本では、大掛かりな設備が必要な装置産業が産業の中心であり、多くの企業が常に設備資金を必要としていましたが、銀行が融資する設備資金の大部分は融資先企業が保有する不動産に姿を変えるため、これらを担保に入れておけば、(当時は不動産価格が上昇していたこともあって)銀行は回収不能のリスクを低くすることが可能でした。
しかし、1990年代頃から装置産業に属する企業の多くが人件費の安い海外に出ていってしまい、それらの代わりに、知識やノウハウを核とする知識集約型産業に属する企業が進出してくるようになると状況は大きく変わってきます。
なぜなら、知識集約型産業に属する企業の多くは、スタートアップ時に多額の研究開発投資を必要とすることはあっても、成長軌道に乗るまでは多額の設備投資を必要としないことが多いため、装置産業に属する企業のように担保に適した不動産を保有していない場合が多いからです。
しかも、知識集約型産業に属する企業にとって重要な資産となり得るのは、知識やノウハウといった個性がとても強い資産であるため、仮に、それらを担保に入れるとしても、不動産と比べて評価をするのがとても難しいという問題もあります。
又、これらの問題を保証によって解決しようとしても、保証に対する社会的な批判が年々高まっていることから、今以上に保証を活用するというのは難しい状態です。
担保に適した不動産を保有しているというだけでは……
地方銀行などが「担保や保証に依存した融資」をこれからも続けていくのであれば、貸倒れが生じた場合であっても、担保等を代金回収に充てることができるので、(一定の手間が掛かることを無視すれば)回収不能のリスクはかなり低く抑えることができるでしょう。
ただ、担保に適した不動産を保有しているかどうかで融資の判断をするということは、先ほど説明したように、新しいタイプの産業よりも古いタイプの産業を重視して傾斜的な融資を行っていくことを意味するため、将来は上得意になる可能性がある多くの顧客をみすみす逃してしまうことになります。
そうなると、銀行が融資事業を今後も継続していくために必要な貸出量を確保できなくなる恐れがあるため、このままでは融資事業を続けられなくなる可能性があります。
今度、銀行があなたの会社に担保や保証を求めてきたなら、その代わりに「今後も融資事業を継続していく」という保証を銀行に求めてみたら面白いのかもしれません……
次回は、「銀行の統合・再編」についてお話ししたいと思います。
白石茂義公認会計士事務所では、士業コンシェルジュというコンセプトのもと、特に、愛媛県松山市、今治市、新居浜市、西条市の経営者の皆様からのお問い合わせをお待ちしております。
必要の際には、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。