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このブログ記事は、2019年11月25日に改題・更新しました。
今回は、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについて解説したいと思います。
「103万円の壁」の正体とは?
中小企業の経営者であるあなたは、雇っているパートさんから「103万円に収まる範囲内で働けるようにしてもらえませんか?」とお願いをされたことはないでしょうか?
パートさんにしてみれば、自分自身の収入が増えたとしても、それ以上にパートさんの配偶者の収入が減るのであれば、世帯全体の収入は減ってしまいますから、103万円に収まる範囲内で働けるのかどうかは、世帯全体の収入に大きな影響を与える重要な問題です。
そこで、このような「103万円の壁」によって生じる就業調整の問題を巡って、平成29年度の税制改正では配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しがされています。
けれども、平成29年度の税制改正“前”であっても、昭和62年度の税制改正によって配偶者特別控除が創設されたことで、所得税法上は既に収入の逆転現象の問題は解消されていました。
ですから、「103万円の壁」によって生じる就業調整の問題というのは、実際には、パートさんの配偶者が勤務する会社から支給されている「家族手当」や「扶養手当」と呼ばれる手当がもらえなくなることによる世帯全体の収入の逆転現象、又は、パートさん自身に所得税の納税義務が課されるという心理的な要因などにより生じていたことになります。
ちなみに、平成30年分からは、パートさんの配偶者の合計所得金額が900万円を超えると段階的(900万円以下、900万円超950万円以下、950万円超1,000万円以下)に控除額が減らされていき、1,000万円を超えると配偶者控除及び配偶者特別控除を受けられなくなっています。
配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しがされたことで……
先ほど、平成29年度の税制改正“前”であっても、所得税法上は既に収入の逆転現象の問題は解消されていたと説明しましたが、だからといって、平成29年度の税制改正による配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが無駄だったというわけではありません。
税制改正によって、控除が認められる収入の上限金額を103万円から150万円へ大幅に引き上げたことは、国として、「家族手当」や「扶養手当」と呼ばれる手当の支給要件を見直して欲しいというメッセージを企業に対して発することにもなるからです。
実際、「家族手当」や「扶養手当」と呼ばれる手当について、就業調整をしないですむように手当の支給要件を見直したり、手当の支給内容を見直したりする企業が出てきているようです。
そのため、今後は就業調整をしないですむことが増えていくでしょう。
但し、社会保険の加入による「130万円の壁(106万円の壁*1)」の問題はまだ残っており、こちらは企業も負担増になる形で見直しがされる可能性が高そうです。*2
もしかしたら、将来は「106万円に収まる範囲内で働けるようにしてもらえませんか?」と経営者であるあなたの方がパートさんにお願いをするようになるのかもしれません……
*1以下の要件を全て満たす場合は、企業の健康保険や厚生年金に加入する(半分は企業が負担する)ことになります。
・正社員が501人以上の会社に勤務*2
・収入が月額88,000円以上
・雇用期間が1年以上
・所定労働時間が週20時間以上
・学生ではない
*2中小企業にも広く適用できるように、正社員の人数の要件を段階的に引き下げていく方向で検討がされています。
次回は、消費税の課税取引についてお話ししたいと思います。
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