企業規模が大きくなければ、競争には勝てないのか?

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このブログ記事は、2021年3月8日に改題・更新しました。

今回は、「規模の経済」や「経験曲線の効果」について解説してみたいと思います。

規模の経済とは何か?経験曲線の効果とは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、「規模が大きくなければ競争に勝てない……」と単純に思い込んでいないでしょうか?

規模が大きくなければ競争に勝てないのか?

確かに、貧弱な道具と人力でコツコツと少しずつ生産するよりも、大型機械を導入して同じものを大量に生産すれば、「規模の経済*1」や「経験曲線の効果*2」が働くことで単位当たりの平均コストが低下するので、コスト面では有利になるだろうと想像できます。

*1生産量(製造業の場合)や取扱量(小売業や卸売業の場合)に関わらず一定額発生する固定費が存在することで、生産量や取引量が増えると単位当たりの平均コストが低下すること。

*2累積生産量や累積取扱量が増えることで、単位当たりの平均コストが低下するという現象のこと。

けれども、規模の経済によって単位当たりの平均コストが低下するためには、それに見合う規模の生産量や取扱量が必要であり、そうでないような場合には、規模が大きくなるほど固定費が巨額になることから、かえって平均コストは高くつくことになるのです。

そのため、規模が大きい企業の場合には、逆に規模の大きさが制約となって、大きな市場になることが見込めないニッチな市場に参入することができません。

しかも、現在のように“多品種少量生産”が主流になってくると、製品や商品の種類が増えることで、段取り作業や仕分け作業などの手間がどんどん発生することになるため、規模の経済による働きはそれだけ弱くなっていきます。

多品種少量生産になると大量生産する意味が……

累積生産量や累積取扱量なのか?それとも、経験値なのか?

一方、経験曲線の効果については、累積生産量や累積取扱量が増えると単位当たりの平均コストが低下するという現象から帰納法的に導かれたものであって、その背景にある理由についてはよく分かっていないというのが実際のところです。

ただ、従業員が作業に習熟することで効率が上がったり、作業の見直しが行われたりすることで単位当たりの平均コストが低下するのであろうということぐらいは予想がつきます。

そうだとすると、本来は企業の“経験値”を独立変数にするべきなのであって、“累積生産量”や“累積取扱量”を独立変数にしているのは、経験値を独立変数にすることが難しいために経験値の代替として使っているに過ぎないということになりそうです。

そして、企業の経験値を効率的に上げるには、単純に量をこなせば何とかなるというわけではなく、経験に対する真摯な態度(例えば、PDCAサイクルを回さなければならない!等)が必要であることを考慮すると、「企業の規模が大きい=経験曲線の効果が大きい」という関係には疑問符がつくことになります。

経験曲線の効果の説明図

又、経験値は企業へ直接的に蓄積されるのではなく、ヒトという経営資源を介して間接的に蓄積するので、企業の規模の大きさが重要なのではなく、経験豊富なベテラン従業員を継続的に雇用できるようにすることの方がずっと重要ということになるはずです。

以上のことから、参入する市場を選べたり、企業の経験値を他よりも効率的に高めることができたりするのであれば、規模が小さくても勝ち目があるということになるでしょう……

次回は、「B to B」と「B to C」についてお話ししたいと思います。

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