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このブログ記事は、2018年9月10日に改題・更新しました。
今回は、「埋没原価」や「機会原価」などについて解説してみたいと思います。
追加依頼の意思決定
中小企業の経営者であるあなたは、以下のような設定で仕事の依頼があったとしたら引き受けるでしょうか?
<設定>
製品Aを下記の条件で製造し、1個25,000円で販売しているX社は、取引先であるY社から「製品Aを一括で1千個仕入れるので、1個15,000円で販売して欲しい」という依頼があった。尚、この販売価格が他の取引先に知られることはない。
製品Aの単位当たりの製造原価
直接材料費(変動費)10,000円
直接労務費(固定費) 5,000円
製造間接費(固定費) 5,000円
合計 20,000円
どうでしょうか?
もし、あなたが管理会計の勉強をしたことがあるなら、「売上高から変動費を差し引いた限界利益がプラスだから、引受けるべきか……」などと思われたかもしれません。
しかし、上記の設定に書かれている条件だけでは、依頼を受けるべきかどうかは決められないのです。
埋没原価と機会原価
不足している条件とは、生産能力に余裕があるかどうかということです。
生産能力に余裕がある場合であれば、固定費である直接労務費と製造間接費は依頼を受けようが受けまいが同額発生するので埋没原価(=意思決定には影響を及ぼさないコスト)になります。
ですから、依頼を受けるか受けないかで変わってくる売上高(@15,000円×1千個)と変動費である直接材料費(@10,000円×1千個)だけで判断すればよく、引受ければ5百万円の差額利益が生じるY社からの依頼は受けるべきという結論になるわけです。
けれども、生産能力が不足している場合であれば、残業代などの追加のコストを支払って増産するか(もちろん、“増産が可能”という前提での話ではありますが……)、増産が不可能な場合には、他に販売する予定の製品AをY社に回す必要があるので、さっきと同じ条件で判断することができなくなります。
例えば、増産すると残業代などの追加のコストが5百万円を超えて生じるような場合だと、これを加えて判断しなければならないので、増産をしてY社からの依頼を受けると損をすることになります。
一方、増産が不可能なため、他に販売する予定の製品AをY社に回す場合には、先ほど考慮した変動費である直接材料費(@10,000円×1千個)はいずれにせよ同額生じることになるので、この場合には埋没原価となり、依頼を受けるか受けないかで変わってくるのは売上高だけとなります。
そうなると、Y社からの依頼を受けた場合には、15百万円(@15,000円×1千個)であるのに対し、Y社からの依頼を受けない場合には、25百万円(@25,000円×1千個)ですから、Y社からの依頼を受けると10百万円の損をすることになります。
ちなみに、増産が不可能である場合に、Y社からの依頼を受けた場合に生じる5百万円の損失は機会原価(=他の代替案を選択すれば得られたであろう利益のうち最大のもの)と呼ばれます。
以上、仕事を引き受けるべきかどうかは、部門別管理や予算管理だけが管理会計の役割ではない……(管理会計のワナ!その1)でも説明したように、その時々の状況によって大きく違ってくるのです。
次回は、「制約がある場合の判断の仕方」についてお話ししたいと思います。
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