決算整理手続きとして時価評価をするということは……(中小企業経営者のための簿記会計入門!その10)

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このブログ記事は、2019年2月11日に改題・更新しました。

今回は、「原価評価と時価評価」についてお話ししてみたいと思います。

時価主義が導入された?

会計ビッグバンにより「金融商品に関する会計基準」が制定されたことで、原則として、金融資産については時価評価をすることになりましたが、日本の会計基準は今のところ「取得原価主義」が採用されています。(国際会計基準(IFRS)については微妙ですが……)

「取得原価主義」が採用されている……

金融資産というのは、現金預金や金銭債権(=売上債権や貸付金など)、有価証券などのことですが、これらは下図の資金循環サイクルの回収や資金の状態にあるものなので、取得原価主義が採用されていても、時価で評価することに何ら問題はありません。*

*全ての資産について取得原価で評価するものを取得原価主義とする考え方もありますが、資金循環サイクルの存在を前提にすると、全ての資産を取得原価で評価することを求めるのは論理的ではありません。

そのため、取得原価主義が採用されているのかどうかの判断の対象になるのは、下図の資金循環サイクルの投下の状態にあるものであり、これには棚卸資産や固定資産などが該当することになります。

資金循環図⑩

例外的に時価で評価される場合

棚卸資産や固定資産などについては、原則として、取得原価を基礎として評価されることになりますが、例外として、時価で評価される場合があります。

棚卸資産については、決算日に取得原価よりも時価が下落している場合に時価評価され、固定資産については、(中小企業で見かけることはありませんが)減損処理が適用される場合に時価評価される可能性があります。

このような場合に例外的に時価で評価されるのは、これらの資産が持っている収益性(=稼ぐ力)が低下していることを損益計算に反映させる必要があるためですが、この考え方の背後には、収益や費用の認識するタイミングを何時にするべきか?(中小企業経営者のための簿記会計入門!その6)で説明した実現主義の影響があります。

その証拠に、棚卸資産や固定資産などの時価が上昇している場合には、時価評価をすることは許されていません。

時価が上昇している場合には時価評価をしません!

つまり、このような時価が上昇している時と下落している時とで非対称の取り扱いになっている(時価が上昇している場合には時価評価しないのに、時価が下落している場合には時価評価する)のは、未実現利益の計上を排除するという実現主義の要請があるからです。

尚、棚卸資産を時価評価した場合の低価法評価損は「売上原価」として処理されるのに対し、固定資産を減損処理した場合の減損損失は「特別損失」として処理されることになるので、それぞれ扱いが少し異なっています。

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