時価上昇を利用した、経営状態を安定させる方法?

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このブログ記事は、2018年10月23日に改題・更新しました。

今回は、「益出し」について解説したいと思います。

益出しとは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、「益出し」を行ったことがあるでしょうか?

益出し?

ちなみに、ここでいう益出しとは、帳簿価額よりも時価が高騰している資産を売却し、その後すぐに売却した資産を買い戻すことで、含み益を実現利益として確定させようとする取引のことです。

かつては多くの企業が益出しを行っていましたが、有価証券に関する会計基準や実務指針が制定されたことで有価証券を使った益出しが実質的にできなくなったこと、又、長引く不況で土地などの固定資産の時価が下落傾向にあることなどから、現在では益出しを行うのはとても難しくなっています。(特に上場企業の場合には……)

ただ、中小企業の場合、実務上の規制は会計基準よりも税法などの定めによるところが多いため、銀行から融資を受けている中小企業が、業績悪化を理由に資金を引上げられるのを回避するために益出し(もしくは益出しに類似する行為)を行っているようなケースは現在でもあり得るでしょう。

益出しは経営状態を安定させることができるのか?

益出しが悩ましいのは、「取得原価主義」という現在の会計の基本的な考え方の弱点を上手く突いている点です。

取得原価主義の弱点を上手く突いている……

そのため、実現主義の1.財貨又はサービスを相手方に引渡し、2.対価として貨幣性資産を受取った時点で収益を認識するという解釈上の要件*を形式的には満たすことになります。

*企業会計原則(損益計算書原則三B)には「実現主義の原則に従い」とありますが、特殊な販売契約による売上収益の実現の基準を除き、実現主義の要件に関する詳細な定めはありません。

けれども、実態としては、売却した資産をすぐに買い戻してしまうことから、実現主義の解釈上の要件を実質的に満たしているとは言い難く、又、企業経営を安定させるという観点からもあまり好ましい行為ではありません。

例えば、過去に5千万円で取得した土地が、現在では1億円になっているとすると、売買手続きにかかる費用などの細かい条件を無視した場合、益出しを行えば5千万円の売却益を計上することができますが、売却することで得た資金は買い戻しのためにすぐ使われるので、この利益には何ら資金的な裏付けがないことになります。

それどころか、最終的に黒字であった場合には税金まで課されてしまいますから、かえって資金は社外に流出してしまうことになるわけです。

益出しのイメージ

ですから、益出しをすることによって、一時的には資金引き上げなどのピンチを回避することができるかもしれませんが、益出しという方法が経営状態を安定させるための根本的な対策になることはあり得ません。

まあ、目の前のピンチをとりあえず何とかしたいという気持ちは分かりますが、そういう時こそ、安易な方法よりも根本的な対策をすることの方が重要ということですね……

次回は、「会計責任」についてお話ししたいと思います。

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