なぜ、減価償却という手続きを行うのか?(あなたの減価償却は間違っている?その1)

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このブログ記事は、2018年7月15日に改題・更新しました。

今回は、減価償却を行う理由について考えてみたいと思います。

もし、減価償却という手続きが世の中に存在しなければ……

中小企業の経営者であるあなたは、なぜ「減価償却」という手続きを行うのか考えてみたことはあるでしょうか?

その答えは減価償却という手続きが存在しない世界を想像してみればよく分かります。

減価償却という手続きが存在しない世界では、固定資産を取得した場合の処理方法は2つしか考えられません。

ひとつ目は、固定資産の取得時に全額を資産として処理しておき、後で売却や除却などの処分をした時に取得額と処分額との差額を損益計算や税金計算に反映させるという方法(以下、「全額資産として処理する方法」と呼びます。)です。

全額資産として処理する方法

ふたつ目は、固定資産の取得時に全額を費用や損金(=税金計算上の費用のようなもの)として処理し、後で売却や除却などの処分をした時に処分額との差額を損益計算や税金計算上で精算するという方法(以下、「全額費用として処理する方法」と呼びます。)です。

全額費用として処理する方法

どちらも極端な方法に思えますが、減価償却という手続きが存在しない世界だと仕方がありません。

但し、現行上も土地については減価償却を行わず、「全額資産として処理する方法」と同じような処理が行われていますし、又、固定資産であっても、使用可能期間が1年未満であるか、取得価額が10万円未満であれば、「全額費用として処理する方法」と同じような処理を行うことができます。

どちらの方法が望ましいのか?

もし、この2つの方法のうちどちらかを自由に選べるとしたら、経営者であるあなたはどちらを選択するでしょうか?

あまり利益が出ていないような場合、「全額資産として処理する方法」を選択すれば、固定資産の処分をするまでは損益計算に反映されないので、その分だけ利益を大きく見せることができます。

しかし、売却や除却などの処分をするとたちまち損益計算に大きな影響を及ぼすことになるので、不要になった固定資産を自由に処分できない危険があります。

一方、利益が多く出ているような場合、「全額費用として処理する方法」を選択すれば、将来使用する予定の固定資産の取得を前倒しすることで節税が可能になります。

しかし、どんな場合であっても固定資産の取得をすると損益計算に反映されてしまうので、業績が悪いような場合には、本来の望ましいタイミングで設備投資ができない危険があります。

どちらの方法も一長一短で、損益計算や税金計算へのインパクトが大きすぎる……

このように、利益が出ているかどうかで2つの方法を使い分けることができるのなら、それなりにメリットがありそうに思いますが、どちらか一方しか選べないのであれば、そのようなメリットも期待できません。

けれども、両方法の併用を認めてしまうと、経営者に利益操作や節税をすることを許すことになってしまうので、外部株主や銀行、税務署などが黙ってはいないでしょう。

それに、どちらの方法も損益計算や税金計算へのインパクトがあまりにも大きすぎて、固定資産の取得や処分を最も望ましいタイミングで行えなくなる危険があります。

そうなると、関係者が合意した一定のルールに従って、減価償却を行うのが最も無難ということになるでしょう……

次回は、減価償却の計算要素について解説したいと思います。

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